仙台市出身で「総合格闘技界の神童」の呼び声が高い神龍誠(19)は、最強への道を猛スピードで進む。主戦場の「DEEP」では史上最年少の18歳で王者に輝き、フライ級(58・5キロ以下)で躍動。子どもの頃から地道に磨いてきたレスリング技術と「キックボクシング界の神童」こと那須川天心(21)から学ぶ打撃を融合させ、勝利の山を築いていく。

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15歳でプロデビューした逸材だ。神龍は小3で出会ったレスリングに熱中し、15年の全国中学生選手権では73キロ級で準優勝。高校へ進学せず「(同世代が学校に行く時間に)練習して誰よりも強くなってやる」。すぐに頭角を現し、無敗で迎えた8戦目に17歳でフライ級王者に挑戦した。

しかし、判定でプロ初黒星となり「負けたら終わりと思っていたので、1カ月ぐらいやる気が出なかった。負けたらどれだけつらいか分かり『途中からリベンジしたい』と練習を頑張るようになった」。環境の変化を求めて所属先を離れ、複数拠点で練習するフリーになるが、古巣ジムでの出会いが今につながる。

総合格闘技に初めて挑む那須川が出稽古で訪れたときに「めっちゃ強いな。打撃を教わりたいなと思った」。那須川の父が代表を務める「TEPPEN GYM」が千葉・松戸にオープンすることを聞き、念願かない一緒にトレーニングできるようになった。「天心さんは練習からめちゃくちゃ強いし、誰よりも追い込んでいる。お手本です」。ミットを持ってもらい打撃を打ち込むこともある。技術全般の向上とキック界の神童が得意にするカウンター習得に必死だ。

昨年6月にDEEP王者になり、同12月には「RIZIN」と「ベラトール」の日米メジャー団体がタッグを組んだ興行に参戦。大観衆の前で勝利をつかんだ。国内で活躍した上で「将来は(米)UFCに行き、引退後はプロレスラーに転身したい」と思い描く。

11年の東日本大震災を機に生まれ育った仙台を離れ、茨城、千葉と転居。故郷に思いをはせ「仙台に格闘技ジムを作り、チャンピオンを育てたい」。新型コロナウイルスの影響で試合やトレーナーの仕事がなくなり、収入はほぼゼロ。それでも不屈の東北魂で未来への扉を開く。【山田愛斗】

◆神龍誠(しんりゅう・まこと)2000年(平12)7月5日生まれ、仙台市出身。小2時に名取のジムでムエタイを半年間経験。小3時に仙台の「レッドブルレスリングクラブ」でレスリングを始め、転居後の千葉・風早中でも柔道部に在籍しながら競技継続。16年4月に「パンクラス」でデビュー。プロ戦績は12戦10勝1分け1敗。憧れは元格闘家の須藤元気氏(現参院議員)。165センチ。