西前頭2枚目の安美錦(36=伊勢ケ浜)が、また1つ、新たな引き出しを開いた。
過去8勝21敗と、合口が悪い小結栃煌山(28=春日野)戦。
「当たってからの変化も頭に入っているだろうし、いつも下からあてがわれて負けちゃう。ここまで勝てないなら、思い切ったことをしないと」。選んだのが「張り差し」だった。
立ち合い、思い切り右から張った。「旭道山くらいのレベルで張って行こうと思ったよ」。ただ、これが自身、初めて挑んだ張り差し。
「今までやったことない。やったことがないから、その後どうしたらいいか分からなかった」。その後が、パニックだった。
結果的には栃煌山の出足を止めた。張った右手で頭をつかみ、思い切り引く。右足1本で俵に残り、はたき込み。昨年夏場所以来、1年ぶりの栃煌山戦勝利を挙げた。
「張り差しって、好きじゃない。張って立つくらいなら、頭の位置で何とか対処できた。でも、ここまで勝てないと、思い切ったことをしないと」。36歳のベテランが見せた、勝ちへのこだわりだった。
「これでまた1つ(張り差しが相手の)頭にあれば。また引き出しが増えたね」と笑った。それでも、どこかさえない表情も。「人の顔を張るのって、いいもんじゃないよね」。


