元横綱日馬富士関による暴行事件で唯一、処分が出ていなかった被害者の師匠、貴乃花親方(45=元横綱)が25日、都内のホテルで日本相撲協会危機管理委員会の聴取に初めて応じた。弁護士同伴で約2時間行われ、自らの行動の正当性を主張したとみられる。危機管理委関係者によると、聴取は今回限りという。28日に開く臨時の理事会と評議員会で同親方の処分を協議する。

 暴行事件が起きた秋巡業中の10月25日からちょうど2カ月後、貴乃花親方がついに聴取を受けた。午前11時半ごろに部屋を出ると、都内のホテルで午後2時ごろから約2時間行われた。相撲協会関係者によると、貴乃花親方は20日の臨時理事会で正当性や貴ノ岩の主張を盛り込んだ文書を配布したのと同様の意見を述べたという。

 聴取には、危機管理委の高野利雄委員長、鏡山部長(元関脇多賀竜)が出席した。鏡山部長の報告を受けた春日野広報部長(元関脇栃乃和歌)は「時間、場所は貴乃花理事の指定。昨日(24日)まで聴取をやることは決まっていなかったはず」と、貴乃花親方の希望で急きょ実施されたと説明した。20日に行われた前回の臨時理事会の際も、危機管理委から要請されていた、被害者で弟子の平幕貴ノ岩への聴取を、当初は20日当日に指定していた。実際は19日に実施されたが、この日も急な日時の指定ながら、弁護士同席と周到に準備もしているなど、聴取の要請に応じたとはいえ、全面的に受け身ではない姿勢をのぞかせた。

 貴乃花親方は部屋を出る際も、午後5時45分ごろに戻った際も、変わらず無言を貫いた。急きょ応じた裏には、親心も垣間見える。今日26日に行われる来年1月の初場所番付発表で、弟子の貴景勝の部屋初の新三役昇進が確実視されている。師匠同席で会見することも多いが今回、貴乃花親方は不在の可能性が高い。晴れ舞台を邪魔しないため、早めに事件に一段落つけた格好だ。

 これで危機管理委による関係者への聴取はすべて終了した。焦点は20日の前回臨時理事会で先送りとなっていた貴乃花親方の処分へと移る。被害者という立場ではあるが、巡業部長ながら秋巡業中に起きた事件について報告義務を怠ったとして、処分は避けられない見通し。また貴ノ岩への、危機管理委からの聴取要請がありながら拒否したことも、影響する可能性がある。

 この日、両国国技館で待機していた八角理事長(元横綱北勝海)や尾車事業部長(元大関琴風)ら協会執行部は、対応を協議した。八角理事長は「何とも(言えない)」と話すにとどめた。これまで貴乃花親方に予想外の行動が多かっただけに、協会の仕事納めの28日に、本当に決着するのか注目される。

 ◆日本相撲協会の処分 賞罰規程の第3章「懲戒」に定められている。親方、力士ら協会員への処分は軽い順にけん責(将来を戒める)、報酬減額、出場停止、業務停止(協会事業への従事を停止する)、降格、引退勧告、解雇の7項目。引退勧告後、速やかに引退届を提出しない場合は解雇に準じて取り扱う。最近の解雇は15年10月、マネジャーの男性を暴行して傷害罪で起訴された熊ケ谷親方(元十両金親)。旧規程で最も重い除名は、公益財団法人移行後の現行規程からなくなった。