1場所での大関復帰へ10勝以上が必要な貴景勝(23=千賀ノ浦)が、因縁の御嶽海との関脇対決を制し、連敗を「2」で止めた。

得意の押し相撲で一方的に押し出した。御嶽海とは、右膝を痛めた5月の夏場所4日目以来の顔合わせ。その取組は寄り切って勝ったが、同場所を途中休場、7月の名古屋場所も全休する要因だった。嫌な流れを断ち切り、優勝争いに残る大きな白星となった。

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迷いがなかった。貴景勝が低い立ち合いから、突き2発で一気に御嶽海を土俵際に追い込んだ。粘る相手に圧力をかけ続け、押し切った。珍しく寄り切った夏場所の対戦時とは違う。体が密着してもまわしは取らず、突き、押しを貫いた。「とにかく自分の相撲を取りきりたいと思っていた」と胸を張った。

取組直後は「何事もなく終わった」という安堵(あんど)感を覚えたという。「特定の相手に特別な感情は持たない」と臨んだが、4カ月前の前回対戦が頭をよぎる。「あの1勝と引き換えに25番ダメにした。休みは負けだから」。大関から2場所で陥落。それでも慣れない寄りを選んで右膝を痛めたのは「自分を高めようとした結果のケガだから、この何カ月を頑張れた」と言い聞かせ、母校埼玉栄高でのリハビリなど復活の道を思い返した。

6日目は行司の足と接触したように見える、珍しいつき膝で敗れた。7日目は立ち合い変化で連敗。力を出し切れなかったが「まだまだ弱い。負けるべくして負けた」と、この日の朝には受け入れていた。「この4カ月やってきたことが出ればうれしい」。四つ相撲も習得しようとしたケガする前より、突き、押しに磨きをかけた今の方が強いと信じている。【高田文太】