新しいグラブを手にする選手が多い季節。手になじんだ相棒を大事にしているのも好感が持てます。自然由来の革製品だけに、どんなにいい形でも高価でも、手入れを間違うと台無しです。毎春恒例になった「グラブの磨き方」。今回は埼玉・久喜市の野球ショップ「コヤナギスポーツ」の小柳翔さん(34)が薦める「汚れ落とし」と「保湿&保革」の方法を教えてもらいました。(値段はメーカー小売価格、税込み)【取材・久我悟】
【オールインタイプを使わず、手早くできる】
埼玉県東部に位置する「コヤスポ」は、在庫数も豊富な上、こだわりの品ぞろえで、地元を始め東京、千葉、栃木など関東全域からの来店客が多い。更新頻度の少ない(すいません)同店の公式YouTubeのコメントが(時々)辛口な割に、接客はやさしくて頼もしい万能型で、選手ファーストを貫いている。
今回のモデルに持ち込んだ記者の私物は、他店で5年前に購入の「ハイゴールド」。小柳さんはそこそこ使い込んだ状態を確認して、店頭のクリームやオイル、ブラシからお薦め商品を選びだした。
作業に入るとキーワードは「塗りすぎない」「重くならない」「柔らかくなりすぎない」。大事にする人ほど、ベタベタにしがちなので肝に銘じたい。
汚れ落とし、保湿、保革もすべて1つでできるオールインタイプは使わない。「せっけんとハンドクリームを同時に使うようなもので、効果も中途半端だし、重くなったり、革が柔らかくなりすぎやすい。状態が後戻りできなくなるので、できたら避けたいです」。効率のいいオールインタイプがなくても、手早くできる方法を教えてくれた。
【汚れ落としは液状とクリーム状のクリーナーで】
ブラシと乾いたタオル、液状とクリーム状のクリーナーを用意。「土やほこりは、革の手入れで使ったオイルやワックスにつくんです。だから汚れ落としは、お化粧のように、革をすっぴんの状態にするのが目的で、汚れたオイルを落とすんです」。土やほこりを落とすのが目的だと思っていたから、いきなりの金言だ。
ブラッシングで汚れを落とす。選んだのは「馬毛」で、これは使う人の好みだという。数分でブラッシングを終えてクリーナーを使って「すっぴん」の作業を開始。「揮発性が高く、乾きやすい」(小柳さん)という液状の「Dクエスト・クリーナー」(1320円)を選択。タオルに少しずつつけながら拭いていく。タオルを10センチ×10センチ大ぐらいに切って使うと、クリーナーをつけた場所がわかりやすい。タオルが汚れたら、違う部分につけて拭き進める。汚れたところばかりを使うと「すっぴん」にならない。
捕球面など強い汚れにはクリーム状の「SSK・クリーナー」(1443円)。革に成分が浸透しにくいのが特長だ。同様にタオルを使ってもいいが、歯ブラシなどでこすり、汚れを浮かせて拭き取るのもいい。今回は「ミズノ・グラブカーブブラシ」(1100円)を使った。捕球面の形に合わせて広い範囲をこすれるので、作業時間を短縮できる。
指の間やひもをほどいたところなど、汚れがたまりやすいので注意する。一通り磨いたら、クリームをきれいに拭き取る。この後に塗るオイルと汚れを落とす溶剤の成分が中和し、効果が薄れてしまう。
【グラブの中の汚れはウエットクロス状が便利】
手の中は汗の塩分が残り、革が痛みやすい。使い捨てウエットクロス状の「ゼット・汚れ落としZOK409」(1210円)で指の奥の方まで拭き取るのが便利。ムートンのモコモコ感も戻る。一般のウエットクロスはアルコールが含まれ、革が痛むので要注意。
【保湿&保革ができるオイルを1種類選ぶ】
「オイルもグラブの相性に合わせて基本的に1種類選びます。お店の人と相談するのがいいと思います。すっぴんにした革に油分と水分を戻すのが目的です。春から夏は水分が乾きやすく、秋から冬は油分がとびやすいので、いずれも重くならない適量で効果を求めます」
取材したのは1月で、革の状態から「Dクエスト・秋冬オイル」(1320円)を選択。体温で温め伸ばすように素手で塗る。捕球面は自分の指先の腹に薄くのる程度の量を、捕球位置(ポケット)から外へ広げていく。重心は中心に、指先が重くならないための配慮だ。オイルを足すのは1回ぐらいで、手に残った油分を、ウェブなどになでていく。
背面は捕球面より少し多めの量を、自分の手のひらに伸ばしてから、薄く塗っていくと一気に広がっていく。高価なイメージのあるグラブオイルだが、伸びがいい物を選ぶと、コスパは格段に良くなる。
春から夏なら水分量の多い「Dクエスト・春夏オイル」(1320円)や革靴用の「エム・モゥブレィ デリケートクリーム」(880円~)を選ぶという。
この作業まで約15分。最後に全体にブラッシングして、なじまなかったオイルを落とす。つやを出したいなら、30分ほど落ち着かせてから磨くのがこつ。終わったらしばらく乾燥させてから袋に入れる。
【こだわりの「追いオイル」とワックス】
ポケットのぱさつきが気になったり、グリップ感が欲しいなら「Dクエスト・ポケットオイル」(1320円)をごく少量追加してもいい。表面をコーティングする「ハタケヤマ・WAX―1」(2040円)の人気も根強いが、メーカーによると現在販売停止中で再開が待たれる。
【使ったら手入れを。そして、2週間に1度のとっておき】
グラブを使ったら、汚れ落としとオイルによる手入れは必ずして欲しい。
「週末だけ野球する中学生なら土曜の夜に両方、日曜の夜は汚れ落としだけにして、しっかり乾かす。金曜の夜や土曜の朝にオイルを塗るのもいいです。毎日練習の高校生は忙しいですが、2日に1度はお手入れしてください」
丁寧に手入れしても、使い込めば油分、水分とも新品の状態から遠くなる。そこで、2週間に1度の栄養補給に「超野球専門店CVオリジナル・レザリオ」(2500円)を全体にしっとりする程度吹きかけるという。「革を製造するタンナーさんの監修で、製造過程で使う油分が含まれて効果的です」。
千葉・鎌ケ谷市の「野球専門店CV」や同店のネット販売、コヤスポで購入できる。
【軟化剤やミツロウ入り、カラーオイルはNG】
オイルを選ぶ際に避けたいのは、革を柔らかくする軟化剤が入っている物。革に着色する「カラーオイル」は、オイルの層を作り、重くなるだけだという。成分表に「ミツロウ」とある物も避けたい。つやはでるが、革をコーティングするので、乾いて欲しい水分が抜けなくなる。一時流行した「スクワラン」も含有量が多すぎると、重く柔らかくなりすぎるので要注意。

