生理用品のCMに若い女性タレントが堂々と出るようになったのは最近のことだと思う。42年前、研ナオコが「チャームナップミニ」のCMで「まだお厚いのがお好き?」とやったときには相当なインパクトがあった。あのキャラクターだからできたのだとも思う。

宗教の戒律、偏見、貧困…インドの農村でのタブー感はどれくらいのものなのだろうか。実話をもとにした映画「パッドマン 5億人の女性を救った男」(12月7日公開)には、1人の男がそのもろもろと戦う「壮絶」と言っていい姿が描かれている。

モデルとなったのは実業家のアルナーチャラム・ムルガナンダム氏。機織り職人の家に生まれ、幼いときに父を亡くして貧困の中で育った。98年に結婚。愛妻家の彼は生理時に苦しむ妻の姿に心を痛める。ナプキンが高価なために隠れるように不潔な布を使い、不浄のものとする周囲の目を気にして日光消毒もできない。さまざまな病気の原因ともなって、結果命を縮めることになる。

ムルガナンダム氏は妻のためにナプキンの手作りに乗り出すが、器用な彼にも吸収力、さらさら感、薄型…最新の技術レベルにはなかなか追いつかない。動物の血を使った実験、女子医科大生への協力依頼…はたからすればどう見ても怪しい。

ヘンタイ扱いだけでは済まされず、村の寄り合いで追放が決まり、愛妻とも離ればなれとなってしまう。それでも彼は諦めない。曲折の末、運も味方して原材料のセルロース・ファイバーにたどり着き、さらに工夫を重ねて簡易型ナプキン製造機を完成させる。

折れない心は感動ものだ。「ボリウッド」の人気者の中でもいい人イメージNo.1のアクシャイ・クマールの絶対怒らない感じが、まるで修行僧のような主人公のキャラにピタリとはまる。愛妻(ラーディカー・アープテー)の他に、製造機開発に理解を示す知的美女(ソーナム・カプール)も登場して、この静かであまりに心のきれいな「三角関係」もじんとさせる。

実在のムルガナンダム氏は14年、米タイム誌が選ぶ「世界で最も影響力のある100人」に選ばれ、その社会貢献の大きさから16年、インド政府の褒章パドマシュリを授与されている。

映画では国連でのブロークン・イングリッシュの演説シーンがグッとくる。

こんなヒーローもいて、こんな感動もある。長尺の多いインド映画にしては、137分とほぼ標準サイズに収まっているのもいい。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)