シンガー・ソングライター谷村新司(71)は、コロナ禍の難局も、ポジティブに捉えている。「歌はどんな時も寄り添ってくれる“心の親友”でありたい」と自身の役割を全うしつつ、若手アーティストにもエールを送る。

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僕は置かれた状況に対して何が出来るかと、ポジティブに捉えていくタイプです。今は、リモートをどう楽しんで、どう伝えていくのかを考えています。例えばライブは、人が集まって、エネルギーを交換する場所なので、動けていない今はつらい状況ですが、動きだした時に何が出来るか? 今だから勉強できることもあると思います。

4月29日には、新曲「グレイス」「心花伝」の2曲を配信しました。昨年はアリスのツアーがあり、2月に千秋楽を迎えて、ソロでの令和初の作品として「令和の時代をどう生きていくべきか」というテーマで「グレイス」を制作していました。テーマが今の状況とも不思議とマッチしたので、先に配信しました。「心花伝」も、この難局をともに乗り越えていきましょうという思いを込めました。

これまでも詩の中で書いてきましたが、朝起きて日が差して、鳥が鳴いている…そんな当たり前だと思っていたことが当たり前ではなく、実は奇跡のようなものだと感じるチャンスでもあります。人が病気になったり、孤独でいる時に歌が心の支えになったという話もたくさんいただきますが、歌はどんな時も寄り添ってくれる“心の親友”のような存在でありたいと思いますし、これからもその役割を全うしていきたいです。

若いアーティストたちや、音楽で生きる人たちに伝えたいのは、“音楽=聖職”だということです。理屈ではなく、音楽は瞬時に言葉や人種の壁を乗り越えて、相手の心に届けられるもの。携わっていることに誇りを持ってほしいし、柔らかい心で、覚悟を持って向き合ってほしいと思います。ファンの皆さんにも、再開した時に、お互い爆発しようね! と伝えたいですね。(構成・大友陽平)

○…「おうち時間」で谷村は、料理にも励んでいるという。「台所に立つことが日常になりました。いままで作ったことがなかった料理にも挑戦して、先日は天ぷらを作りました」。積んだままだった本を読んだり、YouTubeで世界の各都市のライブカメラを眺めながら、旅行気分も味わっているといい「仮想の旅を楽しんでいます。なかなか新鮮ですよ!」。

◆谷村新司(たにむら・しんじ)1948年(昭23)12月11日、大阪府生まれ。71年12月、神戸の音楽サークルの後輩堀内孝雄とアリス結成。翌年3月にデビュー。「チャンピオン」などヒット曲多数。ソロとしても74年に初のソロアルバム発売。80年に「昴-すばる-」が大ヒット。山口百恵さんの「いい日旅立ち」など、数々の名曲を生み出している。15年に紫綬褒章を受章。

4月29日から配信の谷村新司の新曲「心花伝」ジャケット写真
4月29日から配信の谷村新司の新曲「心花伝」ジャケット写真