心の中が少しずつ静かに侵食されていくような怖さがある。「これからあなたを呪います。お前は、呪われて死ぬ」。衝撃的なせりふもあるが、オカルトではなく、ホラーミステリーだ。

漫画家ヤマシタトモコ氏の人気作を実写化。霊を祓(はら)うことができる冷川(ひやかわ)を岡田将生、霊が見える書店員、三角(みかど)を志尊淳が演じる。それぞれの特殊能力を組み合わせ、1年前に起きた未解決の連続殺人事件の裏に潜む呪いの謎を追う。平手友梨奈が事件の鍵を握る、呪いを自在に操る女子高校生・ヒウラエリカに扮(ふん)した。

人間的な情緒に欠け、ミステリアスな役柄の岡田の演技が光る。ふんわりとした空気感を志尊が繊細に表現している。2人が霊をぶん投げる除霊シーンは息をのんだ。セクシーだ。平手には特有のオーラがあり、目力がすごい。

3人は心に傷を抱え、孤独を感じているが、過去を「見る」ことで感情が変化していく。コロナ禍で生きづらさを感じる人も多い。呪いの裏にある人間の邪悪さは怖いが、人と人のつながりへの強いメッセージに救われる。【松浦隆司】

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