居場所を失い東京・新宿歌舞伎町の新宿東宝ビル横、通称トー横に集う若者たち、トー横キッズを描いた。メディアでは社会問題として報じられることが多く作品の公式サイトにも「性被害、薬物、児童虐待、自死の描写が含まれます」など鑑賞上の注意文書が掲出されている。ただ、そうした一連の行為、行動をもとに社会問題というレッテルを貼ることはしていない。

むしろ、トー横に流れ着くに至ったきっかけ、売春や薬物の使用などの違法行為、問題行動の裏で何を考え、思っているかにフィーチャーし劇映画にしている。長久允監督が報道を見たことを契機に企画を5年温め、各所に取材を重ね脚本から手がけたのも納得だ。

小林樹理恵は、カルト教信者の父から厳しい教育=虐待を受け、死後も母による虐待が続き家出する。トー横で同じような境遇の若者と出会い、居場所を得ると家に置いてきた妹を救い出す夢を持つ。一時保護施設で知り合った三ツ葉葉子は援助交際で金を稼いでおり、樹理恵も紹介され売春で金を得て貯金するようになり、日々を重ねた末に、死者数不明の歌舞伎町炎上事件を起こした犯人になるまでの150日を描いた。

樹理恵は売春や薬物などに触れても、生きるため、妹を救うために無垢(むく)なまでに受け入れていく。そんな樹理恵のピュアさを感じられるほど、どこまでも迷いなく演じ切るのは、森七菜にしかできないだろう。三ツ葉を演じたアオイヤマダも一見、本人か分からないほどの役作りで、米アカデミー賞国際映画賞にノミネートされた23年「PERFECT DAYS」から、俳優として着実に進化した跡が見える。【村上幸将】

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