23年10月に、パレスチナ自治区のガザを実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエル南部を奇襲したことに端を発した紛争は、25年の停戦合意発行後もイスラエル軍の攻撃が続いている。その中で公表され、イスラエルが6歳のパレスチナ人少女の一家を殺害した事実が白日の下にさらされた緊急通報電話の音声記録を元に作り上げた1本だ。

24年1月29日にパレスチナの人道支援組織・赤新月社に、ガザから避難命令を受けた家族が車で移動中、イスラエル軍に銃撃されたと連絡が入る。オペレーターが教えられた番号に電話をかけると、少女が「戦車が横にいて撃たれている」と言い残して通信途絶となる。再度、電話すると唯一、生き残った6歳のヒンドさんから「早く来て。撃たれちゃう」と助けを求められる。オペレーターは救急車の派遣を求めるが、責任者は安全なルートを確保しなければイスラエル軍の攻撃を受けるとストップをかける。調整は難航し同社内に緊張、重圧が充満する。

チュニジア人のハニア監督が、ヒンドさんの音声記録を聞き映画化を決意し、ヒンドさんの母や赤新月社に連絡を取り、パレスチナ人俳優を起用し赤新月社での出来事を再現。ヒンドさんの声を撮影時に初めて俳優陣に聞かせたことで演技にリアルな反応、感情が出た。フィクションとドキュメンタリーのハイブリッドで、見ているこちらも当事者の1人になったような感覚を得られた。

憲法改正の動きや防衛費の拡大などが日々、報じられる昨今だが、ぜひ若い世代に見てほしい。日本が戦争ができる国になったら、自分たちがどうなるのか、実感できるだろう。【村上幸将】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)