学校法人「森友学園」の国有地売却問題を担当していた元財務省近畿財務局職員赤木俊夫さん(当時54)が、佐川宣寿元国税庁長官(62)の指示で決裁文書改ざんを強制され自殺に追い込まれたとして、妻雅子さん(49)が国と佐川氏に計約1億1000万円の損害賠償を求めた裁判の第1回口頭弁論が15日、大阪地裁で始まりました。閉廷後、雅子さんは大阪市内で会見を行いました。

会見の途中、夫がスケジュール帳に挟み、大切にしていた「国家公務員倫理カード」の内容を読み上げました。

「国民全体の奉仕者であることを自覚し、公正に職務を執行していますか」

「職務や地位を私的利益のために用いていませんか」

「国民の疑惑や不信を招くような行為をしていませんか」

「公共の利益の増進を目指し、全力を挙げて職務に取り組んでいますか」

「勤務時間外でも公務への信用への影響を認識して行動していますか」

これらの言葉はカードに記載された「倫理行動基準セルフチェック」。公務員としてどう行動すればいいのか。迷ったときに、立ち返るバイブルです。俊夫さんが肌身離さず持っていたためか、カードは所々、色あせ、擦り切れていました。

代理人の生越照幸弁護士は、こう言います。

「当たり前のことが書かれています。おそらく、俊夫さんは最後までご覧になって迷われたのかもしれない」

俊夫さんの口癖は「僕の契約相手は国民です」。公正に職務に取り組もうとした俊夫さんを、だれが、なぜ、追い詰めたのか。公務員としての「誇り」をなぜ、踏みにじったのか。疑惑を招く改ざんをだれのために指示したのか。

法廷で意見陳述した雅子さんは「夫を助けることができなかったのは悔いが残っている。いまからできることはなんでもやりたい」と決意を語りました。

「夫は改ざんしたことを、犯罪を犯したものと受け止め、国民の皆さんに死んでおわびすることにしたんだと思う。夫の残した手記は日本国民へ残した謝罪文だと思う」

18年3月、俊夫さんが自殺する直前にノートに書き残した文章があります。

「最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ、手がふるえる、恐い 命 大切な命 終止府」(原文ママ)。

「夫の死の真実を知りたい」。雅子さんの強い思いがこもった言葉に胸が締め付けられました。【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)