「野良犬の逆襲」といえば、さすがに失礼だろうか? 「第61回上方漫才大賞」で奨励賞を受賞した漫才コンビ「金属バット」のことである。

同賞では、ザ・ぼんちが実に45年ぶり、2度目の大賞に輝いた。昨年のTHE SECONDでの熱演はじめ、70歳を過ぎての充実ぶりは大賞にふさわしい。

また新人賞は、ぐろうが受賞。こちらも近年、着実に力をつけており、ytv漫才新人賞決定戦でも優勝したばかり。例えば炎、三遊間らのライバルを撃破した。

4月7日に大阪市内で開催された上方漫才大賞は、現場取材ではなく、自宅でテレビ鑑賞していた。ゴールデンタイムでの生放送。漫才中の演者を下からなめるようなアングルで放送するなど、カメラワークにも工夫がみられた。

ひそかに注目していた奨励賞争い。ノミネートされていたのはツートライブ、たくろう、カベポスター、天才ピアニスト、金属バット。それぞれキャリアのあるコンビだけに、新人賞とはひと味違う漫才を楽しませてもらった。

M-1王者のたくろうは、さすがだった。1年前とは段違いの忙しさのなか、きむらバンドの見事なリード、赤木裕独特の間の取り方で、テレビの前で声をあげて笑わせてもらった。観客100人による採点が442点。「これで決まりか」と思ったが、最後に出てきた金属バットが482点で一気にまくってしまった。会場の笑いは、この2組が抜けていたと思う。

金属バットは「大阪交通安全カルタ」という絶妙のネタ。「上方漫才大賞」という晴れがましい舞台には最も似合わない小林、友保のキャラクターが抜群だった。

群れない。媚(こ)びない。孤高。金属バットには、そんな言葉がよく似合う。ルックスも超ワイルドで、人を食ったような言動は、誤解を招くこともあるだろう。大阪の若手芸人が日々腕を磨く「よしもと漫才劇場」にも所属することなく、独自路線を貫いてきた。アウトローの美学かもしれない。

近年はミルクボーイ、デルマパンゲ、ツートライブとともに「漫才ブーム」という名の全国47都道府県ツアーで、その存在を見せている。THE SECONDでは3年連続してファイナリスト(ベスト8)と、実力は折り紙付き。昔からどんな世界にも存在する「無冠の帝王」という言葉が似合う2人だった。

今回の奨励賞で「こんなおもしろい漫才師がいたのか!」と再発見したファンも少なくないと思う。勢いに乗って、今年のTHE SECODまでかっさらってしまう予感さえする。

ピカピカの優等生ではなく、腹をすかせた野良犬のようなイメージ。不健康で不まじめな暴れん坊。黒帯やフースーヤも、彼らの前ではおとなしく映ってしまう。「大阪の秘密兵器」がいよいよ、全国のお笑いファンに愛される時が来た。【三宅敏】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミへキタへ~」)