星組新トップ礼真琴は11年目のスピード就任。相手娘役には4年目102期生の舞空瞳を迎えた。ともにトップ入団した首席コンビ。歌、ダンス、芝居と3拍子が高いレベルでそろう礼は、来年106周年の劇団“新世紀”けん引を期待される。フランス発の人気作「ロックオペラ モーツァルト」がトップ初主演作。令和初就任の新トップは「時代にのってチャレンジを」と約束した。大阪・梅田芸術劇場で20~27日、東京建物Brillia HALLで12月3~15日。

「令和」。新元号になって初のトップ就任となった礼が、色紙に書き込んだ。

「ああーっ! プレッシャーですね。105年続き、令和になって『また新しく』と言っていただく分、伝統をどう守っていけるのか、時代にのってチャレンジもしなきゃいけない。まだ、混乱していますね」

トップ初主演作は、フランス発「ロックオペラ モーツァルト」。前トップ紅ゆずるを送り出して数日後には稽古に入った。「実感というか、考える暇もなく、そのまま突っ走っている感じでしょうか」。モーツァルトは天才ゆえ、考えも行動も恋も奔放。「ピュアで純粋。やりたいことを自由にやっていた印象。結果的に(周囲の)人、妻にも迷惑をかけていますが、まっすぐな少年が大人になった」ととらえる。

ロック調で重厚な楽曲。13年の日本初演は、観劇できなかった。環境に縛られず、心のまま動く。切り替えが早い主人公と自身を比べ「私はなかなか(切り替えが)難しい。意外と根に持ちますよ」と笑う。

歌、ダンス、芝居と比類なき実力で若手時代から注目された。あこがれの元星組トップ柚希礼音(ゆずき・れおん)からは「1人で頑張りすぎずに、みんなと一緒に」と助言も受けた。

宝塚音楽学校時代から成績優秀だったが、課題も自覚している。「人に頼るのが苦手なタイプで…」。初舞台時も、はしゃぐ同期を統率するのが首席の務め。「首席にしか分からないつらさがある」と明かす。

相手娘役の舞空も102期首席。初舞台は礼のいた星組だった。「『うんうん、分かっているよ』って思いながら」。舞空が花組へ配属された後も「話す機会があった」と言い、花組公演を観劇した際も「のびのびと、楽しそうに踊っていた」と記憶に残した。

紅、綺咲愛里の前トップコンビには「切磋琢磨(せっさたくま)しながらで、うらやましかった。おふたりの姿を目指しつつ、私たちにしかできないものを」。舞空には「遠慮することなく舞台に」と願う。

「次世代トップ候補」として期待された「黄金世代95期」の旗手。同じく、抜てきが続いた柚香光(ゆずか・れい)も、次期花組トップに決定。「(柚香が)同じ立場でいてくれるのは心強い」。10月の宝塚舞踊会で、星組トップとして一足早く本拠地の舞台を踏み、柚香からも祝福された。

「紅さんからは『自分のやり方で、やりたいように』と。手をあげて『みんな、ついてこい』みたいに言えたらかっこいいけど、そんな人間じゃないので…」

来年は元旦の宝塚大劇場鏡開きが仕事始め。「考える暇がないのはありがたい。(考えすぎる)自分をごまかしながら、ノンストップでいきます。(本拠地)お披露目に向け、オリンピックもありますので、私たちもその勢いに乗っていけたら」と言う。首席らしい視野の広さ、伝統と革新を融合させる度量、技量も武器に、新時代の宝塚を表現していく。【村上久美子】

◆フレンチ・ミュージカル「ロックオペラ モーツァルト」(潤色・演出=石田昌也) 09年にパリで初演。以後、フランスはじめ欧州ツアーで通算150万人を動員。アジアにも進出し、世界各地で上演され、13年には山本耕史、中川晃教で日本初演された。音楽を愛し、恋と自由を求めた天才音楽家モーツァルトの半生を描き、今回が宝塚歌劇初演になる。「太陽王」「1789」「アーサー王伝説」を手掛けたドーヴ・アチア氏によるフランス発のロック調ナンバーが重厚感を醸し出す。

☆礼真琴(れい・まこと)12月2日、東京都生まれ。09年入団。星組配属。13年「ロミオとジュリエット」新人公演で初主演。歌、ダンス、芝居と高レベルで3拍子そろい、14年全国ツアー「風と共に去りぬ」でヒロインも。17年夏「阿弖流為」で東上初主演、今年5月「アルジェの男」で全国ツアー初主演。紅ゆずるからトップのバトンを継いだ。身長170センチ。愛称「まこっつぁん」「こと」「こっちゃん」。