嵐・松本潤(33)が23日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた主演映画「ナラタージュ」(行定勲監督、10月7日公開)完成披露試写会で、行定勲監督(49)から「嵐の松潤がいるよ…と思い、声をかけづらかった」と言われ、「嵐ですけど…」と言い、苦笑した。

 松本は劇中で、社会科教師・葉山貴司を演じた。葉山は過去のある出来事から逃れられず、影があり謎の多い人物という役どころ。嵐として活動する時とは全く別の松本の表情が、公開前から話題となっている。

 行定監督が「(スクリーンの中の表情は)今日とは明らかに違うね。葉山先生は、もっと僕にとっては親近感がある」と言うと、松本は「僕が親近感がないみたいな…やめてくださいよ!!」と苦笑い。同監督は「(親近感)ありますよ。でも今日とは明らかに違う」と、松本の役作りをあらためて評価した。

 行定監督は、島本理生氏の原作を長年、映画化したいという思いを実現できたのは、松本と、葉山を愛する教え子の工藤泉を演じた有村架純(24)とめぐり会えたからだと強調した。

 行定監督 (原作は)12年くらい前に、映画の企画としてやらないかと映画会社の方からいただいて出会った作品。昨今、こういう恋愛劇が映画化されない状況が続いていて、やりたいと思って10年かかった。キャストが、うまくはまらなかった。10年待って2人と出会った。この作品は、2人ともリスクの非常に高い部分もあったと思うんですけど、一緒に作ることを2人も受け入れてくれて今日の日を迎えられた。

 その上で、恋愛映画に対する熱い思いを吐露した。

 行定監督 恋愛は曖昧なもの。実際、やっている人間が、どの程度、自分が激しい感情にとらわれているかが分からないものだということが(原作には)克明に書かれている。先生と元生徒…関係性としては抑圧している関係。感情の揺れ動きがものすごく彼女の方にはあるけれど、先生の方は謎。この2つを映像化することで、共感はたくさん描けるんじゃないかと。1番感情が揺り動かされると思うのは恋愛。かつて日本映画がたくさん作っていた、堂々とした恋愛劇…成瀬巳喜男監督の映画とか、近いものを作ることが出来たらなぁというのがあって。この原作なら出来ると思って、ずっと粘って何とか製作にこぎ着けた感じです。

 劇中には、成瀬監督の1955年(昭30)の名作「浮雲」が流れる場面があり、行定監督の日本映画における恋愛劇への熱い思いが垣間見られる。【村上幸将】