「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」などの人気ドラマに出演した俳優の左とん平さん(ひだり・とんぺい、本名肥田木通弘=ひだき・みちひろ)が24日午後、心不全のため、都内の病院で死去した。80歳だった。

 昨年6月に急性心筋梗塞で入院して手術を受け、出演舞台を休演した。その後も、誤嚥(ごえん)性肺炎を患い、長期にわたって入院生活を送っていた。親族によると、最近は見舞いに訪れても、コミュニケーションがなかなか取れない状態が続いていたという。容体の急変を伝えられた家族らが病室に駆けつけ、妻、長男、所属事務所社長、マネジャー、付き人の5人にみとられて息を引き取った。葬儀・告別式は、近親者で行う。

 57年に同級生らと劇団を結成、三木鶏郎さんが設立した「冗談工房」に参加した。その後、東京・新宿コマ劇場などの舞台に立ち、喜劇俳優として経験を積んだ。独特のとぼけた味わいと風貌を生かし、70年代に大ヒットしたドラマ「時間ですよ」や「寺内貫太郎一家」「ムー一族」などに出演して、お茶の間の人気者となった。その後も貴重な脇役として活躍を続け、「居酒屋兆治」「楢山節考」などの映画にも出演した。

 歌手としても、73年にミッキー・カーチスがプロデュースした「とん平のヘイ・ユウ・ブルース」をヒットさせた。

 私生活では、ポーカー賭博などで3度逮捕されたこともあり、謹慎生活を送ったこともあった。

 芸名「左とん平」の「左」は「肥田木」から取り、「とん平」は三木さんが当時通っていた居酒屋の店名から取った。

 ◆左とん平(ひだり・とんぺい)1937年(昭12)5月30日、東京都生まれ。57年に三木鶏郎、野坂昭如、永六輔、いずみたくらがいた「冗談工房」メンバーとなる。主なドラマは「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」「非情のライセンス」など。映画は「楢山節考」「居酒屋兆治」などに出演。舞台は「売らいでか!」「天切り松~人情闇がたり」など。趣味はゴルフ。