16年の第29回東京国際映画祭で日本映画スプラッシュ部門に出品され、24日に公開された映画「かぞくへ」(春本雄二郎監督)の上映イベントが26日、東京・ユーロスペースで行われた。
この日は、単館系のアニメ映画ながら興行収入26億円を超える大ヒットを記録し、3月4日に米ロサンゼルスで授賞式が行われる、第90回米アカデミー賞の長編アニメーション部門の候補対象作品にも選出された「この世界の片隅に」の、片渕須直監督(57)が駆け付け、春本雄二郎監督(39)とトークを行った。
2人は日大芸術学部映画学科の先輩、後輩で、春本監督の師匠の松島哲也教授が片渕監督の同期で、片渕監督自身も現在、映画学科の講師を務めるという間柄だ。学年は19年、離れており、片渕監督は「大学の先輩と後輩…僕の19年、年上だと(『機動戦士ガンダム』などで知られる)富野由悠季監督。すごい怖いんですけど、僕は怖くないようにします」と言い、客席を笑わせた。
片渕監督は、大学の同期に俳優の真田広之と船越英一郎がいることを明かした上で「松島は同期でありながら、現役の監督で教授もしている。僕も(『この世界の片隅に』を作る際に資金を集めるため)クラウドファンディングに頼らざるを得なかった。大学に週1回、教えに行く中『お金の算段、どうしようかと』と(話した)」などと松島教授との関係性を説明。その上で「恵まれていないところで土台から作ったものが、お客さんにどう見てもらうか工夫したり、やみくもでやってきた中、『春本のを見てやってくれ』と言われた」と、松島教授から「かぞくへ」を勧められたと説明した。
「かぞくへ」は、家族の温かさを知らない旭(松浦慎一郎)が同居中の佳織(遠藤祐美)と結婚間近の中、親友の洋人(梅田誠弘)に良かれと思って仕事を紹介した結果、詐欺被害に遭わせてしまい、苦悩し、事後処理などに奔走し、追い詰められていく物語。片渕監督は作品の感想を聞かれ「(春本監督が、自身と)同じように作りたいものを1から、土台を作り地面を耕しながらやった。ものすごい実直な感じ。アニメーションは、どうしてもエンターテインメントの方に偏る中、そうでありつつ、そうでないものを作り、自分の中で定めた。てらいのない実直さは得難い。でありながら、テクニカルでユーモアのあるところを持っている。良いなと思った」と評価した。春本監督は、その言葉を聞き「助監督を12年やりながら、感性が鈍ってきていると思った。今年1本、撮らないとダメだと思った」と製作に踏み切った思いを吐露した。
すると、片渕監督は、自身の20、30代…そして劇場長編アニメーション監督デビュー作となった00年の「アリーテ姫」を製作した当時の思いを語った。
片渕監督 自分が描くのを諦めた時、誰の目にもとまらず消えてしまうと思い…それが嫌だった。20代は何だか分からないのに、ぶち当たれば良かった。30代は耕さないといけない…その時期に「アリーテ姫」を作った。
春本監督はトークの最後に「僕と(主演の)松浦から始まった映画。これからの映画界を、変えていきたい、自分たちの演技で響かせていきたいという真摯(しんし)な気持ちで作った」と熱っぽく語り、作品をアピールした。



