宇崎竜童(72)が会見でおもしろい話をしていた。
妻は作詞家の阿木燿子(73)。2人は、近松門左衛門の「曽根崎心中」をフラメンコで表現する舞台「Ay(アイ)曽根崎心中」(12月12日から、新国立劇場)を、01年から続けている。阿木はプロデューサー、宇崎は音楽監督という立場で、舞台を引っ張っている。会見はこの舞台の制作発表だった。
16年に静岡・浅間神社で行われた公演には、「フラメンコ=スペイン」ということで、スペイン国王夫妻を招待していた。それを聞いた天皇皇后両陛下も、観覧をご希望されたという。しかし、前日に熊本地震が発生したため、来場はかなわなかった。
翌17年、スペイン国王夫妻が日本を訪問した。同時に夫妻を歓迎する宮中晩さん会が開かれ、舞台の縁で宇崎、阿木夫妻が招待された。プロデューサーである阿木が招待され、宇崎は「配偶者」の立場で参加した。
会場には配偶者を伴った内閣関係者がズラリと並んでいた。その数、百数十名。もちろん、安倍晋三首相の姿もあった。
1人ずつ名前を呼ばれ、席に案内された。「安倍晋三様、令夫人」。どんどん来客が着席していく。宇崎はこのとき思った。招待されたのは妻の阿木で、自分は配偶者だ。「俺はなんて呼ばれるんだろう?」。
ついに呼ばれた。「木村広子様(阿木燿子の本名)、令夫」-。「れい、ふ、です。初めて聞いた言葉です」と自虐を交えつつ真顔で話す宇崎に、会見場は笑いに包まれた。
宇崎は酒が飲めない。宮中晩さん会では、天皇陛下の「乾杯」の音頭で酒をあおり、続けてスペイン国王の音頭でも勢いよく飲んでしまったため、その後の記憶がほとんどないという。
会見ではしばしば、本筋から話がそれることがある。とはいえ、これほどまでにいろんな意味でぶっ飛んだエピソードも珍しい。芸能まわりで首相の名前はまず登場しないし、「天皇」に関してはもってのほかだ。彼が築いてきた功績がどれほどのものか、思い知らされた。
宇崎は「ぜひとも、今年の舞台には天皇皇后両陛下にお越しいただきたい」と結んだ。平成最後の公演になるであろうこの舞台、宇崎の願いがかなうことを祈っている。



