是枝裕和監督(57)が24日、イタリアで現地時間28日に開幕する「第76回ベネチア映画祭」のオープニング作品に選ばれた新作「真実」(10月11日公開)について都内で語った。

日本人監督の作品が同映画祭のオープニングを飾るのは初めて。日仏合作で、フランスの名女優カトリーヌ・ドヌーブ(75)が主演した、母と娘を描いた物語。

是枝監督は「いいワールドプレミアの場所を与えていただきました。僕の作品にしては珍しくさわやかな読後感なので、映画祭の開幕としてはいい出だしなんじゃないかと思います」と話した。

昨年、「万引き家族」で、カンヌ映画祭の最高賞パルムドールを受賞し、今回も受賞を期待する声もあるが「作るたびに賞レースを戦う流れ、期待していただくのはありがたいんですが、正直言うと大変なんですよ。パルムドールを取ったので、レースを戦う感じで新作を作るのはもういいかなという感じなんですけど、どうも周りはそうじゃない」と苦笑い。

「真実」が家族をめぐる小さな物語で、軽やさ、さわやかさもある作品ということで、是枝監督は「謙遜ではなく、3大映画祭で賞を取る作品はもう少し重厚感があって、社会性の高いものが総合点が高い。それ向きじゃないかな」と分析した。

昨年、是枝監督作品の常連だった樹木希林さん(享年75)が亡くなった。ドヌーブが希林さんに見える、という感想を寄せてくれる人もいるそうで、是枝監督は「分からないではない。毒舌にセンスがあって楽しい。悪口を言っている時が一番生き生きしている」と、2人の共通点を語った。さらに希林さんについて、是枝監督は「これから、彼女がいない前提で映画を撮っていくということに直面しなくてはいけない」と、いまだ大きな喪失感も明かした。

ベネチア映画祭は28日夜(日本時間29日未明)にレッドカーペット、オープニングセレモニーが行われ、引き続いて「真実」が上映される。