吉永小百合(75)の主演映画「いのちの停車場」(成島出監督、21年公開)撮影現場会見が11日、都内の東映東京撮影所で行われた。会見の冒頭で東映の手塚治社長(60)が、大麻取締法違反容疑(所持)で8日に逮捕された伊勢谷友介容疑者(44)の件について触れ、同容疑者の出演シーンをカットすることなく、映画を完成させて公開することを明らかにした。

手塚社長は「伊勢谷さんの報道を耳にして、非常にショックを受けております」と心境を語った。その上で「製作チーム、関係する会社と何度か相談を続けました。製作、配給を担当する東映と致しましては、カットはせずに映画を完成させ、公開することとしました」と明言した。

手塚社長は、判断を下した理由について「映画は、劇場の公開でスタートする。鑑賞する意図を持ったお客さんに来ていただく、クローズのメディア。テレビ、CMとは質が違う」と、作品を見たい観客が、自らの判断で選んで鑑賞するメディアであると強調。その上で「個人と作品は違うという東映の見解の元、作品を守る配慮をした。ご理解いただければと思います」と語った。

伊勢谷容疑者は劇中で、脊髄損傷で四肢がまひしたIT企業の若き社長江ノ原一誠役を演じ、吉永と初共演が実現していた。東映の関係者によると、撮影は同所で4日にクランクインしており、同容疑者の撮影は6日に終了している。同容疑者は9日、取り調べに「大麻は自分が吸うために持っていたものです」と容疑を認めている。

東映は19年3月、麻薬取締法違反(使用)の疑いで逮捕されたピエール瀧が出演していた映画「麻雀放浪記2020」(白石和弥監督)について、4月5日に予定通りノーカット公開する判断をした。当事の多田憲之社長(現相談役)が会見で「あってはならない罪を犯した1人の出演者のために、作品を待ちわびているお客さまに、すでに完成している作品を公開しないという選択肢は取らないという結論に至った」との見解を示した。その見解が、手塚社長が語った東映の見解にも反映された格好だ。