8日に都内のグランドシネマサンシャインで、映画「るろうに剣心 最終章 The Final」(23日公開)のIMAX上映を鑑賞した。この日は、主演の佐藤健(32)武井咲(27)新田真剣佑(24)と大友啓史監督(54)が、映画を製作したスタッフとともにIMAX上映を鑑賞後、公開記念イベントを行った。その取材を兼ね、配給&宣伝サイドに依頼し、IMAX上映を見た。

記者は、10年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」でチーフ演出を務めた大友監督が、11年にフリーに転身後、同作で岡田以蔵を演じた佐藤を主演に第1作を製作した当時から「るろうに剣心」シリーズを取材してきた。14年8、9月に「-京都大火編」「-伝説の最期編」が連続公開された際は、同8月にフィリピン・マニラで開催したアジアプレミアにも同行取材した。「-最終章 The Final」も、既に都内の試写室で1度見ており、内容は知っていた。

それでも、縦18・5メートル、横25・8メートルの巨大スクリーンに映し出された映像と、音の素晴らしさには正直、驚いた。佐藤が演じた伝説の剣客「人斬り抜刀斎」こと緋村剣心と、新田が演じたシリーズ最恐の敵・雪代縁(えにし)との激闘など、アクションがウリだけに大画面、高画質&音質のIMAXにうってつけの作品だろうと思ってはいた。

もちろん、アクションシーンの迫力は言うまでもない。むしろ、剣心たちが縁側でたたずんでいるなど、静かな場面において感じるものが多かった。画面の隅々まで施されている細かい造形、美術に気付かされ、見入ってしまった。また剣心が、武井演じる神谷薫や縁と向き合い、語り合うシーンでは、俳優陣の瞳の奥に単なる喜怒哀楽という言葉では語り尽くせない、感情の交錯が見え隠れした。

とにかく、音が素晴らしい。会話もなく、愚直なまでに繰り返される戦いの中、無音の様に思われた中で俳優陣の体がきしむ小さな音や、試写室では聞こえにくかったマスクを着けたキャラクターのせりふが明確に聞こえたのには、本当に驚いた。

イベントの中で、大友監督は「僕らの作ったもの全てを、ディティールを含めて見られた。精魂込めて作ったものが、IMAXだと全て見られる。作品を通して何を伝えようとしたか、俳優の演技…目の奥の感情まで見ることが出来る。IMAX一択です」と絶賛。その上で「(演じる俳優の瞳の中に)憎しみの奥にある、真逆の感情が見えてくる。好きなんだけど戸惑い…感情が複雑に見えるのが演出として魅力」と、演じている俳優の感情が垣間見えると強調した。

佐藤は「ディティールが細かく見える。傷とか。手が抜けないなと」と語った。そしてIMAX上映で重点を置いて見たのは何かと聞かれると「エキストラの方の芝居が見えますよね。自分以外の所を、あえて見ていた。みんな細かいことをしているんだ、という発見があった」と語った。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、首都圏や関西圏に再発出された緊急事態宣言が解除されて以降、再び感染が拡大している。人が移動することが、感染拡大に直結することが分かっている中、映画を伝える立場の映画記者であっても、読者に向かって「映画館に行きましょう」とは、正面切って言いにくい。そんな状況が、もう1年も続いている。「映画館に行きましょう」とは言いにくいから「良い映画です」という書き方で伝え続け、読者の判断に委ねてしまっていることが、もどかしくてたまらない。

でも…あえて言おう。「るろうに剣心 最終章 The Final」、そして「-The Beginning」(6月4日公開)は、IMAX上映が最もふさわしい……それは、間違いない。【村上幸将】