菅義偉首相(72)の素顔に迫ったドキュメンタリー映画「パンケーキを毒見する」(内山雄人監督、7月30日公開)特別内覧試写会が23日、都内で開かれた。製作陣は、菅氏に近い自民党議員達が結成した「ガネーシャの会」所属の若手議員や、同氏がかつて“影の市長”の異名を取った横浜市議会や神奈川県議会の議員らに取材を試みたが、全て拒否された。同氏が使用するホテルや番記者を連れていったことで話題となったパンケーキ店からも取材NGが相次ぐ中、徹底した取材を敢行した。

そのほか、G7の中で日本が最低に落ち込んでいる項目が多いというデータや、企画から関わった元経済産業省官僚の古賀茂明氏(65)が、テレビ朝日系「報道ステーション」を降板に追い込まれた内幕も“暴露”。アニメなども絡め、現役政権トップを題材にした初の映画でありながら、エンターテインメントとしても楽しめる“政治バラエティー映画”となった。内山監督は「政治ドキュメンタリーとすると、見る人が限られる枠組みがある。笑える、面白いとなると、入り口になる。(見て)投票に行って欲しい。最近、風刺や社秋の“いじくり”がなくなってる。何としてでも復活させたい…庶民の笑いから力にならないか。笑いながら、そう、そうという気持ちがわき上がれば…」と製作意図を説明した。

河村光庸エグゼクティブプロデューサーは、映画「宮本から君へ」(真利子哲也監督)が助成金交付内定後に下された不交付決定の行政処分の取り消しを求めて、文化庁所管の独立行政法人「日本芸術文化振興会」(芸文振)を訴えた裁判で、21日に不幸不処分の取り消しを命じる判決を勝ち取り、勝訴したばかり。19年の映画「新聞記者」でも、若き女性新聞記者と内閣情報調査室の官僚が対峙(たいじ)し、葛藤する姿を通し、現在の日本の政権、政治と社会に疑問を投げかけた。

その上で「菅内閣が発足して、すぐに、いても立ってもいられず、この映画を作ろうと思った。タイトルは最初に決めた。映画の表現は自由であって然るべきなんですけども、長年、映画業界に忖度(そんたく)というか『新聞記者』で描いたような、同調圧力がまん延しておりまして。監督を何人か当たりましたが、5人くらい断られまして、長年の知り合いの内山君に頼んだ」と経緯を説明した。

公開日は、東京オリンピック期間中の7月30日を、あえて選んだ。河村氏は「どこかの政治勢力には一貫して与しない。民主主義国家の中で当たり前のことをやる、こういう映画が当たり前のように作っていかれないといけない。9月に多分、総選挙があるであろうと思う。ジャーナリズム、メディアの方が、ぜひとも、この映画に影響されて、選挙に対して、きっちり、どの政党、政治家を選ぶということじゃなくて、間違っているじゃないかと、態度をきっちり表明して頂きたい」と訴えた。

古賀氏は「タイトルが決まったらあたりから関わった。単なる菅政権批判じゃ面白くないし、客観的に見てもらいたかった。たくさんの人に見てもらいたいから、ロードショー館でやって欲しかった。中身は難しいけど、面白いものにする。ハードルは高い。こういう先生に話を聞いたら良いんじゃないの? とやってきた。難しいものに挑戦したけれど、楽しいものが出来た」と手応えを口にした。