熱気球といえば、観光用の比較的安全な乗り物というイメージがある。

だが、考えてみれば浮力の源となるのは強力なバーナーの裸の火だし、移動は風まかせである。そして、上昇の度を越せば、酸欠となって命に関わる。足元のゴンドラには十分な強度があるのだろうが、カゴのような外見はちょっと心もとない。

「タービュランス 絶空16,000フィート」(7月10日公開)は、そんな熱気球を舞台にしたスカイ・パニック作品だ。

リッチな実業家ザックは、流産で落ち込む妻エミーを癒やすため、イタリアの世界遺産ドロミテの熱気球に誘う。夫妻とパイロットだけの貸し切りのはずだったが、離陸寸前に謎の女性ジュリアが乗り込んでくる。

美しい光景が広がる上空に達した時、ジュリアが唐突にザックとの「不貞」を明かし始める。一瞬にして修羅場と化したゴンドラ内からパイロットが転落。コントロールを失って上昇を続けるゴンドラは酸欠寸前の高度1万6000フィートに。気丈なエミーの機転で乗り切るが、暴風雨、乱気流…三角関係にヒリヒリする3人に次々と自然の脅威が襲い掛かる。

限界状況の中で、サイコに見えたジュリアの正体や誠実そうなサックの本性がしだいに明らかになる。果たして3人は生還できるのか…。

エミー役は「移動都市/モータル・エンジン」のヘラ・ヒルマー。か弱く見える序盤からしだいにたくましさを発揮する芯の強い女性を巧演。「レイルウェイ 運命の旅路」で役のために13キロ減量したジェレミー・アーヴィンがザックの嫌な感じをうまく出している。そして、ボンドガール女優オルガ・キュレリンコが謎の女性ジュリアにハマっている。

サバイバル・スリラー「エア・ロック 海底緊急避難所」のクラウディオ・ファエ監督は、熱気球の仕組みをわかりやすく見せながら、パニック描写にメリハリを付ける。

エンベロープ(球皮)に火が付いたり、ゴンドラの底に穴が開いたり、切り立った崖に接触したり…特殊効果だけに頼らないリアルな描写に見応えがある。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)