東京映画記者会(日刊スポーツなど在京スポーツ紙7紙の映画担当記者で構成)主催の第65回(22年度)ブルーリボン賞で、「ある男」で作品賞を受賞した石川慶監督(45)のインタビューを担当した。石川監督の考える昨今の邦画界全体の見解に考えさせられた。
同作は主演の妻夫木聡をはじめ、安藤サクラ、窪田正孝、清野菜名、柄本明、仲野太賀ら豪華キャスト陣をそろえた。コロナ禍で他所のスケジュールがとどまり、運もあったというが、石川監督は「本当に理想的なオールキャストが集まった。見た目が派手なだけではなく、この役にこの人だという、幸運が重なった。こんなキャストが集まるのは2度とない」と口にした。
亡くなった夫・大祐の妻を演じた安藤については「サクラさんは日本を代表するというのがいろんな映画祭に行ってすごく実感する。“世界の安藤さん”なんだなと。どこにいってもファンがいて、サクラさんの新作を待っている人がいる」。撮影でもその存在感は輝いたといい「現場にサクラさんが座ることでうそが本当になる感じがする。圧倒的なオーラもあるけど、自分の周りのうそを本当に出来る女優さん」と語った。
同作は第79回ベネチア国際映画祭オリゾンティ・コンペティション部門正式出品され、上映終了後、5分に及ぶスタンディングオベーションを受けるなど、海外でも高い評価を得た。だが数字的に「もう少し」との思いもあったという。「この映画は300館で封切りできて達成感はあったんですけど、正直言うと、もう少し数字が伸びてくれればという思いもあります」と心境を明かした。
昨今の邦画界全体、実写が苦戦している現実に「大事なのは継続すること。映画の多様性という意味でも実写が作られていくことに意味がある気がします。1つには作り手の問題も大きい。その人に刺さるモノが作れていないのかも、と自分の中にも思うところもある。それプラス内容が面白いモノを作る、制作に至るまでのプロセスが足りていないとも思います」と見解を示した。
同作には社会問題も扱ったが、石川監督は“おもしろい作品”を考える時に「ジャンルにこだわらず、地理的、時間的にどのくらい遠くに届く題材か?」を考えるという。制作に時間がかかり、時間軸がずれる映画にとって「今はおもしろいけど2年後に誰も見ない」という題材は厳しい。映画館だけではなく、サブスクリプションで映画を見られるようになった昨今には「5年後、10年後でも見てくれる題材か」を考えなければならない。
ジャンルにこだわりがないという石川監督の今後の作品は「なかなか明かせない」と笑いつつも「軸足は日本ですけど、いろんな国の人と仕事をする機会があればやりたい。少しずつ枠を広げるような作品を今のところ、準備しています」と語った。ホラーやコメディーもやりたいと明かし、学生時代から書き続けているオリジナル作品もあるという。今後も石川監督作品を見続けたい。【加藤理沙】



