「ナインティナインのオールナイトニッポン」(木曜深夜1時)の構成を94年7月の1部昇格から29年にわたって務める、放送作家小西マサテル氏(57)の小説「名探偵のままでいて」(宝島社)が、「第21回このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、このほど出版された。

後編では、お笑いのこと、そしてナイナイ、南原清隆(58)について聞いてみた。【小谷野俊哉】

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高松第一高時代は落研に所属。明大文学部時代は、高松の同級生と漫才コンビを組んだ。

「高校時代の落研の1年上がウッチャンナンチャンの南原清隆さんです。南原さんの落語を見てびっくりして、落研に入りました。明大の落研は名門ですが、なぜか僕が入った頃はつまんなくて。それで、やっぱり南原さんの背中を追いかけて、お笑いをしたいと漫才コンビ、チャチャというのを組んで、オーディションになんとか受かりました。マセキ芸能さんのお世話になったのですが、当時のマセキには内海桂子・好江師匠と南原さんたちぐらいしかいない時代。上野の方の小さなマンションでね。で、相方は親が厳しくて、就職するって言ってホリプロに入って、解散になっちゃいました。そこで、コント赤信号のリーダーの渡辺正行さんに、ちょっと番組を手伝ってくれって言われて、放送作家の道へ。リーダーは芸人はもちろん、裏方もいっぱい面倒見ているんですよ」

駆け出しの放送作家になって、何でもやった。

「売れっ子になったわけじゃないから、田舎の人に対して説明するのは一番困りました。リーダー(渡辺)の番組に付けてもらったりしているうちに『それじゃ、うちもやらない?』って、声をかけてもらえるようになりました。当時は、まだバブルだから、僕みたいな体(てい)でも食っていけたんですよ。予算が豊富にありましたから。仕事も構成作家だけじゃなく、落とし穴用の穴を掘るとか。だから半分ADみたいなね。若い頃はそういうのもありました」

94年7月スタートから「ナインティナインのオールナイトニッポン」の構成を担当。14年10月から20年5月までの「岡村隆史のオールナイトニッポン」をへて、20年5月から再び「ナインティナインのオールナイトニッポン」。その間、29年におよぶ。

「これは本当に、たまたまだったんです。94年の4月から2部で始まって、7月から1部に上がるということになって。じゃあ、スタッフを全部代えるっていう話になって、その時にたまたま僕に声をかけていただいた。ナイナイと仕事をするのは初めてでした」

結婚して家庭を持ち、パパになった矢部浩之(51)が途中で卒業し、14年10月からは岡村隆史(52)が1人でパーソナリティーを務めたが、20年4月に“舌禍事件”で炎上。渦中の翌5月から矢部が復帰して救われたという。

「岡村隆史が謝罪みたいなことになるっていうのは、忸怩(じくじ)たる思いがありました。僕は、その現場にいたわけですから。岡村君に会ったことのある人には分かっていただけるんですけど、僕なんかに対しても、どんなに若いスタッフに対しても“さん付け”で。あんなに優しくて、人当たりのいい人はなかなかいない。なんとか少しでも取り戻したいと考えていました。『ここは矢部浩之しかない』って電話したら即答で『行きます』と。『小西さんが、泣いてるのが全てですよ』っていう感じでした。ナイナイの2人の紐帯(ちゅうたい)の強さたるや、なんというか…。本当に、あんなにうれしいことはありませんでした」

今回の「このミステリー-」で大賞を受賞した際も、ナイナイの2人から祝福されたという。

「岡村君はLINEで、すぐに『飲みに行きましょう。おめでとうございます。おごります』みたいな感じで。そもそも、この作品を応募する前に読ませてくれって、A4の紙で百何十ページもあるクリップで留めただけのものを、東京と大阪往復の新幹線の中で読んでくれて『ここ、直した方が、いいですよ』と言ってくれていたので、喜んでくれていますね。矢部君の場合は『いっぱい買います』って(笑い)」

南原からは、電話がかかってきた。

「『すごいやないか、人生大逆転やないか』みたいな。40年ぐらいの付き合いがあるんですけど、『ちょっと、待ってください』と。『人生大逆転て、僕、今まで失敗してじゃないですか』ってツッコもうとしたら、涙が出てきて…。なんか声が震えちゃってね。そうしたら南原さんも、もらい泣きしてくれた。あれは、うれしかったですね。40年ですもん」。

現在は他に、「徳光和夫 とくモリ!歌謡サタデー」や「笑福亭鶴光のオールナイトニッポン.TV@J:COM」の構成も担当している。

「徳光さんは82歳ですよ。その徳光さんが今回の6章のミステリーを読んでくださって、リスナーに『6つの小説を楽しめるミステリーなんで、絶対お得です』って言ってくれる。ありがたかったですね。自分が80歳をすぎてあれほど丹念にミステリーを読み込めるかなと思うと、本当にモンスターだと思います。徳さんと(笑福亭)鶴光師匠に共通するのは、昔よりトークのテンポが良くなっていることです。徳さんは、物忘れが増えたなんてことをよく自虐ネタにしていますが、実は記憶力抜群ですし、滑舌は全然悪くなっていないんです。鶴光師匠は、一応原稿は作るんです。普通はおもしろくさせるために原稿を作るんですけど、鶴光師匠の場合だけは、ちょっとルールが違う。原稿がないと、エロが暴走しすぎるんで、その歯止めなんです。いわば、老化という現象にあらがっていくおふたりのモンスターぶりこそが最大のミステリーかも知れないですね(笑い)」(おわり)

◆「名探偵のままでいて」 主人公の楓は、小学校の教師。かつて小学校校長だった祖父は、レビー小体型認知症を患い、幻視の症状に悩まされていた。だが、楓の周りで起きた不可解な出来事を聞くと、知性を取り戻し謎を解き明かしていく。

◆小西(こにし)マサテル 1965年(昭40)8月19日、香川・高松市生まれ。高松第一高時代は落研に所属。明大文学部時代に漫才コンビ、チャチャとして日本テレビ系「お笑いスター誕生」、フジテレビ系「冗談画報」などに出演。在学中から渡辺正行に師事して放送作家に。94年7月からニッポン放送「ナインティナインのオールナイトニッポン」を現在に至るまで担当。他に「徳光和夫とくモリ!歌謡サタデー」「笑福亭鶴光のオールナイトニッポン.TV@J:COM」など。南原清隆の「ナンチャンお気楽ライブ」構成・演出も手がける。