9月のベネチア映画祭(イタリア)で、最高賞の金獅子賞に次ぐ査員大賞(銀獅子賞)を受賞した、濱口竜介監督(44)の新作長編映画「悪は存在しない」(24年ゴールデンウイーク公開)に主演した、大美賀均(おおみか・ひとし=34)の初監督中編「義父養父」が、12月15日から東京・シモキタ-エキマエ-シネマK2を皮切りに全国で順次公開することが6日、決まった。
大美賀監督は、1988年(昭63)に栃木県に生まれ、桑沢デザイン研究所を卒業後、主に演出部、制作部として映画製作に関わってきた。ベルリン映画祭(ドイツ)で審査員大賞(銀熊賞)を受賞した、濱口監督の21年「偶然と想像」で製作を担当するなど、本業は俳優ではない。「悪は存在しない」でも、企画の立ち上げ当初は濱口監督がシナリオハンティングした際の運転手で、流れの中で主演。村に長く住み何でも屋を営み、娘の花(西川玲)と自然のサイクルに従い質素ながらも豊かに暮らす巧を演じた。
「義父養父」は、大美賀監督の知人の実際にあった話をモチーフに、同監督が自ら企画、脚本を手がけた。今回の公開決定にあたり、コメントを発表した。
「初めまして。映画『義父養父』監督の大美賀均です。私は普段、映画の制作部や演出部として活動しておりますが、この度監督としては初上映となる映画が完成しました。この映画は私の知人(リカ)の実体験が元になっています。彼女の母は5人目の夫(ミノル)と再婚をし、彼女自身もミノルの兄(ユタカ)のもとへ養子にいく決断をしました。彼女が初めて、ユタカの家へ訪れたとき、ユタカの妻(フミコ)と出会います。1度聞いただけでは覚えられないような、その複雑な関係性を話してくれる彼女は、更新されていく自身の戸籍に戸惑い、また面白がっているようにも見えました。実際その場では、私はその相関図を曖昧にしか理解できずにいたのですが、それでも話の中の出来事やディティールに、想像力を刺激され、妄想が膨らんでいきました。単純に「映画だったら観たい」と思いながら聞いていました。その後数週間、具体的なキャストやスタッフを逡巡していた結果、幸運にも撮影できる環境が整い、『義父養父』が完成しました」
濱口監督も、大美賀監督へ期待のコメントを寄せた。
「大美賀さんには、スタッフとして拙作を手伝ってもらう機会が多くあった。彼の監督作として『義父養父』を見せてもらって、抑制の効いた語りのなかで、各ショットを滋味深く機能させてゆく手並みは、実のところ普段の彼から想像できず、大いに驚かされた。果たしてラストに至るまでショットたちが有効に機能し得たか、という評価は観客に委ねたいけれど、私が一作通じて最も撃たれたのは、映画全体から漂う、曰く言い難い『気高さ』だった。それを感じて、それまでとは違う形で大美賀さんと仕事をしてみたいと思った。新作『悪は存在しない』の主演を無理を承知でオファーしたところ、彼は引き受けてくれた。結果は、素晴らしいものだったと思う。『義父養父』には、見た者に闇雲な期待を抱かせる『何か』が写っている。それを写し取る人は決して多くない。いつか、心からよいと感じる映画を撮る人はこういう人なのではないか、と私は思っている」
「義父養父」には澁谷麻美、松田弘子、有薗芳記、菅原大吉、黒沢あすか、カトウシンスケ、川添野愛、マリークレア、フランク景虎、久藤今日子らが出演。公開に先駆けて、6日午前0時から、クラウドファンディングをスタートさせる。
◆「義父養父」服飾デザイナー・リカ(34)の母は少し前、5度目の再婚をした。「男に経済力は求めていない」が母の口癖だった。ある日、リカは母の再婚相手の双子の兄豊(65)を紹介される。精神疾患のある妻を持ち、自身も末期癌の豊はリカに養子に来てほしいと言う。養子として一緒に過ごすうちにリカは豊に父性を感じ始めるがその矢先、豊が逝く。



