「シルエット・ロマンス」などの大ヒットで知られる歌手の大橋純子(おおはし・じゅんこ)さんが9日午後4時14分に死去したことを11日、所属事務所が正式発表した。73歳。北海道出身。

18年にがんであることを発表し、今年に入って再発したがんで療養中だった。

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シンガー大橋純子さんの原点は、ふるさとの北海道夕張市にある。かつて炭鉱の町として栄えた。

実家の大衆食堂はいつもにぎわっていた。幼少の時、歌好きの看板娘として、要望があれば歌を披露した。ご褒美は10円。敬老会では「王将」を歌った。後日取材に「これが人生の初ステージ」と話した。

叔父も喫茶店を経営。隣はキャバレーだった。叔父の家に行くと、海外の怪しい音楽が壁越しに聞こえた。「大人の世界をのぞいているようなドキドキ感がありました」。高校でボサノバの「マシュ・ケ・ナダ」(セルジオ・メンデスとブラジル’66)を聴いて衝撃を受け、歌手を夢見た。「壁越しに聴いた体験が布石だったのかも」と話した。

炭鉱が次々と閉山し、夕張市は07年3月に財政再建団体に指定された。会社で言えば「倒産」。大橋さんはすぐに動いた。「私にできることは歌うこと」とチャリティー・カバーアルバム「Terra」を7月に発売した。中島みゆき、松山千春、安全地帯、ドリカム、GLAYと北海道出身のアーティストの作品をカバーした。自らの「シルエット・ロマンス」も収録した。「お年寄りも多いので、なじみのある曲がいい」と、初めてカバーに挑戦したアルバムだった。

夕張鉄道のバスの車内案内を無償で担当したこともあった。「次は本町4丁目。実家の食堂があったのも、この近くです」とアナウンスした。少しでも活性化になればと願った。

大橋さんのパワフルな歌唱を支えた原点である。【笹森文彦】