ファッションの流行は、20年周期で繰り返すと言われる。アレンジやマイナーチェンジが施されたにしても、昔、流行ったような形の服が最新ファッションとして登場することはあるし、そもそも、昔の服が古着として人気を呼び、1つの市場を形成している。
スギちゃん(50)の話を聞いていて、同じことがお笑いの世界にもあるのだと感じた。10日に都内で行われた納豆PRイベント「粘り強さ・オブ・ザ・イヤー2024」の質疑応答で、スギちゃんは12年のユーキャン新語・流行語大賞で年間大賞に選ばれた代名詞のギャグ「ワイルドだろぉ」が、4、5年生くらいの小学生の間で、再びウケ始めていると口にした。
その理由として「営業に行っても、子どもたちが知らんのですよ。ネタをやっていくと、はまっていく。(全く新しいギャグとして)一から見ている。令和に見ない、ワイルドさにハマる。何だ、この男は? と」と、「ワイルドだろぉ」が新ネタ、ギャグとして受け止められていると分析。「変える必要がない。何で沈んでいたか…この時を待っていたから。こっちが(芸を)変えちゃうと損。ブームになり、生き残りたい!」と、再ブレイクの波を逃さないと不退転の覚悟を示した。
再ブレイクの兆しを口にしたスギちゃんとともに登壇した、所属のサンミュージックの先輩ダンディ坂野(57)も、自身を代表するギャグ「ゲッツ」が、2003年(平15)に新語・流行語大賞にノミネートされてから、21年たった今も輝き続ける。イベントではスギちゃんとともに、芸能界で粘り強く生き残り、活躍していることから今年、設置された「粘り強さ・オブ・ザ・イヤー2024」を受賞。「『ゲッツ』がはやったのが03年。(その存在が)デカ過ぎたおかげで大変でしたけど、低空飛行を重ねながらも粘り強く頑張って、27年目の今も皆さんの前に立てている」と喜んだ。
2人と同じサンミュージック所属で、同様に定番のギャグで息の長い活動を続けているのが、小島よしお(43)だ。記者は、23年8月に「小島よしおが再ブレイク 都内のイベントでは即満席『10年前から同じネタそんなの関係ねぇ!』」と題した原稿を書いた。2007年(平19)の新語・流行語大賞トップ10を受賞した「そんなの関係ねぇ」、候補入りした「オッパッピー」が幼児や学童の間で圧倒的に支持され、全国からイベント等で声がかかり、各所で子どもたちが熱狂している状況を報じた。
3人に共通しているのが、新語・流行語大賞にノミネート、もしくは受賞した、絶対的な看板ギャグを生み出し「一発屋」とやゆされようがブレることなく、愚直なまでに自分のギャグを繰り返し、貫き、磨き続けていることだ。坂野といえば黄色のスーツがトレードマークだが、現在の衣装は8代目。「袖が長いのが特徴、こう(ポース)やったら、ピッタリのを作った」と「ゲッツ」の際、指を伸ばすポーズのために特注する、こだわりぶりだ。
小島は、もともと子どもが大好きで「そんなの関係ねぇ」の勢いが落ちだした10年代半ばに、子供向け書籍やアルバムを展開。全世界がコロナ禍に陥った20年には、学校に行けない子どもたちのためにYouTubeチャンネル「小島よしおのおっぱっぴー小学校」を立ち上げ、算数教室を展開したことで、子供の親たちの心もつかんだ。それが「10年前から同じネタ、でも、そんなの関係ねぇ!」と叫ぶパフォーマンスに、全国の親子が熱狂する源になっている。
スギちゃんは、坂野とともに応じた「粘り強さ・オブ・ザ・イヤー2024」の質疑応答の中で「不思議な感覚で…私たちは1回、ドンといって(ギャグがウケて)ね、本来だったら終わりですよ。神様って、いるんだなというのを痛感しますよ」と感慨深げに口にした。その上で「俺は別に何か新しく、小島よしおのように子供向けにしようとか、海外向けて頑張ろうとか、そんなの一切、やっていないんですよ」と、自分は新しいことは何もしていないと強調した。
一方で「小島のXを見ていて、あんなに考えてやって(イベント会場に)子どもたちが、いっぱいいて…いいなと思うけど。すげぇなと思って見ている」と、小島から刺激を受けていると吐露。さらに「ダンディさんは何十年も前から、当時のファンに変わっちゃったと思わせないように体形を維持することをやっている。すごい」と、坂野が還暦近くなってもキャラが変わらない裏には、人に見えないところでのストイックさがあると明かした。
スギちゃんは、坂野と比較して「私なんか今、どんどん太ってきて、髪の毛が薄くなってきて…でもジージャンの色は変えない」と自らにダメ出ししたが、当然ながら何もしていないわけはない。昨今、エンターテインメント作品作りに押し寄せる、コンプライアンスの波に「ワイルドは、コンプラに引っかかりやすい。生きにくい時代。子どもがマネしないようにやっています」と、配慮しながらワイルド芸を続けているという。
「粘り強さ・オブ・ザ・イヤー2024」では、坂野と1分間で納豆3パックを器に移し、はしを器の縁に付けて1分間で何回、混ぜるかを競う納豆まぜまぜ対決を行った。スタート時に、主催の茨城県の関係者に「はしなんかいらないぜ、手でいいぜ!」と要求したが、その後、すぐに「コンプラ、大丈夫? 言ってくれ! 手でいいのか? コンプラだけ、確認してくれ!」と要求した。テレビや新聞、ウェブ媒体で、手で納豆をかきまぜる様子が報じられた場合の影響等を考慮し、判断するよう求めたが、最終的には通常のレギュレーション通り、はしでかき混ぜた。
スギちゃんは「ヤバい時に誰かが、何かしてくれたり、何も変わっていないのに誰かの代わりに出られる。他力本願で生きている」と反省した。一方で「最終的には、人柄で生きてきたのかな」とも語った。記者はスギちゃん、坂野、小島を、インタビューも含めて何回か、取材したことがあるが、そのひと言に納得した。「一発屋」と言われようが、ブレずに芸、自分の笑いを貫く3人が、ここまで芸能界の一線で必要とされ続けたのは、いつ、どこで、どんな時でも変わらない安定した笑いと、その人柄…そこに尽きると記者は考えている。【村上幸将】



