東京・新宿のK's cinema1館で7月31日に封切り後、話題を呼び21日から全国21館で拡大上映が始まった、上坂龍之介監督(31)の自主映画「レンタル家族」の拡大公開記念舞台あいさつが同日、東京・TOHOシネマズ日比谷で行われた。同監督は父方の祖父が亡くなったことを契機に、映画監督になる夢を成し遂げるため自主映画に挑戦したと語った。一方で、母方の祖父の体調が悪化しており、拡大公開によって地元・兵庫県でも映画が見られることになったことを喜び、涙した。

「レンタル家族」は、主演の荻野友里(43)が演じる認知症の母を抱える沼田洋子が「レンタル家族」サービスを利用することを通じて、現代社会における家族の絆やつながりを深く問い直すヒューマンドラマ。上坂監督にとって初監督作ながら、第23回中之島映画祭でグランプリを受賞。25年末に新宿K's cinemaで1週間限定の自主上映を行い、全回満席を記録し、7月31日からの上映から22日間連続オンラインチケットが完売し、28日から50館に拡大公開されることも決まっている。

上坂監督は、黒岩徹(65)が演じる洋子の父と同じ名前の父方の祖父・忠勝さんを亡くしたことが、今作を製作した契機だと明かした。「映画監督になりたかったんだよな。助監督という道もあったけれど、当時の状況で自主映画でやるしかない」と、短編映画を撮った経験もない中、自主映画の製作に挑んだと振り返った。

その上で、俳優陣にも話していなかった「母方のおじいちゃんがマズい状態」と打ち明けた。「来年、再来年と作品が決まっているんですけど、スクリーンで見せてあげられるのは『レンタル家族』が、ラストチャンス。配給会社も入ってくださって、兵庫の映画館でもやっていただけるようになった。良かったなと」と言い、泣いた。舞台あいさつの最後には「初めての自主映画が、商業映画として見られるようになった。自主映画なんや、よな? と変な感じ」と、大ヒットに対する率直な思いを語った。この日は、荻野を筆頭に総勢13人の俳優が登壇した。

◆「レンタル家族」 東京の会社に勤務する沼田洋子(荻野友里)は、仕事で多忙な毎日を過ごす傍ら、定期的に実家へ帰省をし、父・忠勝(黒岩徹)とともに認知症の母・千恵子(駒塚由衣)のケアをしている。千恵子の症状は進行が早く、洋子が数年前に離婚したことさえ忘れ、帰省の度に元夫と娘について聞くのであった。ある日、取引先の担当者から「レンタル家族」を紹介され、体験レンタルを強く勧められ、耳なじみのないサービスに戸惑ったが、断りきれずレンタル夫を家事代行として自宅に呼ぶ。派遣された松下豪(龍輝)と馬が合い、千恵子のことを相談すると自分を夫、知り合いの子役・安田朱里(中本りな)を娘として、家族を演じることを提案。日々進行していく千恵子の認知症、不器用ながら千恵子を支えようと奮闘する忠勝、複雑な事情を抱えながらレンタル家族を担う松下と朱里…洋子は、自分を取り巻く“家族たち”と月日を重ね、新たな幸せのかたちに触れていく。