劇団新派の女優、水谷八重子(みずたに・やえこ、本名・松野好重=まつの・よしえ)さんが28日に肺炎のため亡くなったと31日、松竹が発表した。87歳だった。葬儀・告別式は近親者で執り行い、後日お別れの会を開く予定だという。
水谷さんは、1939年(昭14)東京生まれ。父は歌舞伎界の名門・守田勘彌(14代目)、母は文化功労者にも選ばれた初代水谷八重子という「歌舞伎と新派のサラブレッド」として注目をあびた。
55年に16歳で歌舞伎座で行われた新派公演「相続人は誰だ」「八月十五夜の茶屋」で水谷良重を名乗り初舞台。同時にジャズ歌手としてもデビューした。ハスキーで洗練された歌声は人気となり初期のNHK紅白歌合戦には4回出場した。その後、日本テレビ系バラエティー番組「あなたとよしえ」で司会を務めるなどお茶の間でも人気者となった。79年に母の初代水谷八重子が死去。95年に二代目水谷八重子を襲名した。
◆新派とは 明治時代、旧派(歌舞伎)に対する演劇として生まれた。自由民権思想を芝居で訴えた壮士芝居が発展したとされ、1888年(明21)12月3日に大阪新町座で行われた壮士芝居が新派の祖。自由民権思想を民衆へ伝える役割を担った尾崎紅葉、泉鏡花、三島由紀夫ら多くの作家が、新派の名作を生み出し、初代喜多村緑郎、河合武雄、花柳章太郎、初代水谷八重子といった名優を輩出している。水谷さんは生前「明治、大正、昭和の細やかな生活態度や人との触れ合い、日本人の生きざまを色濃く芝居の中で演じています。残したい日本人のふるさとです」と魅力を語っていた。



