作業服を着た3月の「変装」とは一転して、2度目の保釈は淡々と進められた。午後10時過ぎ、トヨタ製の黒いワンボックス車2台が東京拘置所に横付けされた。同22分ごろに出てきたゴーン被告は、ダークスーツにノーネクタイ姿。少しやつれた印象はあるが、弁護団の高野隆弁護士とともに背筋を伸ばして歩き、悠然と車に乗り込んだ。

保釈中の再逮捕という、東京地検特捜部による今月4日の逮捕劇も異例なら、再度の保釈に対して地裁が出した条件も異例だった。前回の条件に加え、キャロル夫人との自由な接触を禁じた。地裁の許可を得れば可能だが、理由の説明が必要となる。「接触」は、電話やメールなども含まれる。弁護団の弘中惇一郎弁護士(73)はゴーン被告はこの条件ついて「知っていると思う」と述べた。

特捜部は、日産の子会社からオマーンの販売代理店に支出させた資金のうち、約5億6300万円をゴーン被告が実質支配するレバノンの投資会社に還流させ、日産に損害を与えたとの構図を描く。さらに資金の一部は、キャロル夫人が代表を務める会社にも流れ、約16億円のクルーザー「社長号」の購入費に充てられた疑いがある。夫人は11日に地裁に出頭し、初公判前の証人尋問を受けている。

ただ弘中弁護士は、他にオマーン疑惑で名前が挙がる人物が「事件関係者」として新たに接触が禁じられたとする中、キャロル夫人は「事件関係者との形容詞は付けられていない」と説明した。また米投資会社「ショーグン」の最高経営責任者を務める息子アンソニー氏ら、子どもとの接触は制限されていないという。

関係者によると、今後、ゴーン被告は1度目の保釈時と同じ、都内の制限住居で暮らすことになる。キャロル夫人はいないが、身の回りの世話は家政婦がおり、問題はないという。