外国産の新スターが誕生した。単勝1・3倍、断然1番人気のグラスワンダー(尾形)が、前半中団から直線で楽々と抜け出して、1分33秒6で3歳コースレコード勝ち。圧倒的な強さで3歳馬の頂点に立った。的場均騎手(40)は現役最多タイの3歳重賞9勝目。G1初勝利となった尾形充弘師(50)は、来秋のアメリカ遠征を明言した。

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ラスト1ハロンの標識を過ぎた時、それまで右手前で走っていたグラスワンダーがようやく左手前にスイッチする。ゴーサインを出したい気持ちを我慢して我慢して、その瞬間を待ちわびた的場騎手が、右ステッキを1発、2発とたたきつける。一気にスパート、前脚を地面にたたきつけるようなド迫力の走法だ。内で粘るマイネルラヴを一瞬でかわして、無人の野を行く。あれよあれよの2馬身半、まさに独走のゴールインとなった。

ゴールしてから再び、ファンから拍手と、どよめきが起きた。1分33秒6の表示に、「レコード」の赤い文字が掲示板に光っている。的場自身が7年前にリンドシェーバーでマークしたレコードタイムを実に0秒4短縮。2着のマイネルラヴがレコードタイム(1分34秒0)で走っているのに、それを差し切って、さらにゴール前で差を開くとは……。

「今日はスタートも良かったし、前との距離を測りながら、無理をせずに馬場のいい所を選んで通った。直線では差し切れるかな、という手ごたえだった。本当に注文を付けるところがないぐらい素晴らしい馬です。騎手の指示通りに動いてくれる」と普段は辛口の的場が手放しで絶賛する。

実はレース2日前、右前脚に軽度ながらソエ(若駒に多い軽い炎症)が出ていた。そのため的場は、脚元に負担がかからないように、終始、馬場の外めのいい場所を選んで通った。しかも、直線で右脚に負担がかかる右手前から左手前に替えるまで、ゴーサインを待つ余裕。4角も不利がないように大外を回る慎重策だった。ほかの14頭にすれば「ナメるなよ」と言いたくなるような話だが、現時点での力の差は絶望的なぐらい開いていたということだ。

レース後、尾形師は来秋の米国遠征を口にした。「NHKマイルCを勝って無事に夏を越せたら、アメリカに行きたい。アメリカで生まれた馬だし、あちらに逆に乗り込んで行きたいですね」と夢を語る。チャーチルダウンズ競馬場で行われるブリーダーズCマイル、あるいはクラシックへの参戦が濃厚だ。

スターホースが次々と引退した97年だが、年も押し詰まってから、待ちに待った新星が誕生した。世界を目指すのは、サッカーだけじゃない。【松田隆】

◆グラスワンダー▽父 サルヴァーホーク▽母 アメリフローラ(ダンチヒ)▽牡・3歳▽馬主 半沢(株)▽調教師 尾形充弘(美浦)▽生産者 フィリップス・レーシング・パートナーシップ(米国)▽戦績 4戦4勝▽主な勝ちくら G2京成杯3歳S(97年)▽総収得賞金 1億1469万4000円▽馬名の由来 半沢オーナーの兄の所有馬グリーングラスから、冠にグリーンかグラスを。ワンダーは、セリでの馬体が素晴らしかった(ワンダフル)から。

(1997年12月8日付 日刊スポーツ紙面より)※文中のレース名、年齢は当時の表記