1番人気キタサンブラック(牡5、清水久)が天皇賞・春秋連覇でG1・6勝目を挙げた。不良馬場のなか、出遅れをリカバーし、直線は内から抜け出して勝利。武豊騎手(48)の冷静かつ大胆な騎乗が光った。鞍上は春秋合わせて天皇賞14勝目。劇的な勝利に、北島三郎オーナー(81)も喜びを爆発させた。2着はサトノクラウン。3着には13番人気のレインボーラインが入った。
◇ ◇ ◇
これが日本最強馬だ。横一線に泥しぶきが広がるなか、最内からキタサンブラックが伸びてきた。残り400メートル以上を残して先頭へ。外からサトノクラウンが迫ると闘志を再点火させ、最後は内に切り替えたライバルを首差振り切った。「(2着馬の)足音は聞こえていたけど、押し切れると思った」(武豊騎手)。ゴール直後、右手を熱く、激しく振り下ろした名手のガッツポーズが、雨中の激闘を物語っていた。
天才が、悲鳴を歓声に変えた。まさかの出遅れ。最後方に近い位置からレースを始めた。「前扉に突進してしまって。体を後ろに下げたところで、ゲートが開いた」。同様の経験がなかったブラックにとって、予期せぬ展開にも思えた。ただ、日本最強騎手は違う。
「今までもゲートで元気なところはあった馬。必ず前でとは思っていなかったし、それならそれでと」
作戦は大胆だった。馬群の内からスイスイと位置を上げ、3コーナーの手前では好位の一角まで挽回。4コーナーも内にこだわった。降りしきる雨で、荒れに荒れた不良馬場。各騎手が内を避けたのとは対照的だった。「道中もそれほど(道悪を)苦にしなかったので」。初めての作戦を遂行しながら、手応えを確かめる冷静さもあった。
30年もの間、期待に応えてきた第一人者ならではの1勝だ。かねて言う。「いちばんの喜びは1番人気で勝つこと。期待に応えることだから。競馬で緊張した記憶はあまりない」。G1・3連勝が期待された前走・宝塚記念は9着。それでも今回、ファンはブラックを1番人気に推した。「結果を出さないと、と思っていた。今日はキタサンブラックらしい走りができた。大きな1勝」。14回目の天皇盾が重みを増した。
ブラックにとっては、最強の座を奪い返したG1・6勝目だ。すでに今年限りでの引退を発表済み。ただ、惜しむのはまだ早い。ジャパンC、そして有馬記念。まだ2回も、キタサンブラックが見られる。「この馬にとってもラストシーズン。手綱を任されている責任を感じている」と鞍上の思いも同じ。今回の勝利で、歴代最多となるJRA・G1・8勝の夢にも望みをつないだ。「そうなるよう、全力を尽くします」。祭りは続く。【柏山自夢】
◆キタサンブラック▽父 ブラックタイド▽母 シュガーハート(サクラバクシンオー)▽牡5▽馬主 (有)大野商事▽調教師 清水久詞(栗東)▽生産者 ヤナガワ牧場(北海道日高町)▽戦績 18戦11勝▽総収得賞金 14億9796万1000円▽主な勝ち鞍 15年菊花賞(G1)スプリングS、セントライト記念(G2)、16、17年天皇賞・春(G1)16年ジャパンC(G1)京都大賞典(G2)、17年大阪杯(G1)▽馬名の由来 冠名+父名の一部
(2017年10月30日付 日刊スポーツ紙面より)※表記は当時

