22日深夜には1着1000万ドル(約15億5000万円)の世界最高賞金レース・サウジC(G1、ダート1800メートル=キングアブドゥルアジーズ)が行われるが、同日のリヤドダートスプリント(G2、ダート1200メートル)も注目だ。
伝説の名牝の系譜を受け継ぐガビーズシスター(牝4、森一)が初の海外遠征に挑む。長島和彦オーナー(62=長島商事代表)は、亡き父忠雄さんが所有した1975年(昭50)の2冠牝馬テスコガビーの血統と馬名に強くこだわり、よみがえらせた。【取材・構成=岡山俊明】
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勇躍サウジに遠征するガビーズシスターは、テスコガビー抜きには語れない。
ちょうど50年前の1975年、1頭の快速娘が牝馬クラシックを席巻した。関西テレビ杉本清アナウンサーの名調子が、桜花賞の大差勝ちに彩りを添えた。
ぐんぐんぐんぐん差が開く差が開く 後ろからは何にも来ない(3度繰り返す)(中略)先頭はテスコガビー これは強い強い強い これは強いこれは強い 赤の帽子ただひとつ ぐんぐんぐんぐんゴールに向かう テスコガビー大楽勝~(中略)いやあ恐れ入った 恐れ入りました
オークスも8馬身差で圧勝。長島忠雄オーナーに同行して口取り写真に納まったのが、長男で当時中学1年生の長島和彦氏だった。「人生で一番の晴れ舞台でした。今から考えてもあれ以上のことはありません。達成感に満ちた夢の舞台でした。あの感動が忘れられず、どうしても馬主になりたかったのです」。
忠雄氏は89年に死去。和彦氏は社業を継ぎ、念願だった中央の馬主資格を取って今年で6年目になる。「父が最後に持った馬(ジョーダッシュ=85年共同通信杯4歳S2着)から40年たちました」。先代の勝負服(黄色地に紫鋸歯形)は既に他名義で登録されていたため、袖に紫二本輪を足した。
テスコガビーは5歳の時に放牧先でトレーニング中に心臓まひで急死してしまったため、子供がいない。そのためテスコガビーの母キタノリュウの血を引く馬だけにこだわって探し求めた。見いだした馬には全て「ガビーズ」の名を冠し、これまで馬名登録した7頭のうちの1頭がガビーズシスター。1歳時にネットのサラブレッドオークションで371万円(税抜き)で落札した。3歳1月にデビューして階段を駆け上がると、昨年12月のカペラS(G3)で重賞初制覇。ダートでは6戦して5勝、2着1回と底を見せていない。「カペラSは負ける気がしなかった。少ない中からガビーズシスターが出てくれたのは奇跡に近い。競馬の神様が見ていてくれたのかな。競馬はドラマ、競馬はロマン。この血をつなぐのが僕の使命。古い血統でもスピードがある。キタノリュウの系統にいい種を付けて立て直したい。零細馬主ですが、やるからには競馬史に名を残したいですね。馬が勝つと多くの人を幸せにしてくれる。ガビーの血で世界に羽ばたく夢もある」。昭和の伝説は令和によみがえり、色あせない。
◆ガビーズシスター ▽父アポロキングダム▽母 アンジュデトワール(スペシャルウィーク)▽牝4▽馬主 長島和彦▽調教師 森一誠(美浦)▽生産者 へいはた牧場(北海道新ひだか町)▽戦績 8戦5勝▽総獲得賞金 8885万5000円▽主な勝ち鞍 24年カペラS(G3)
◆テスコガビー 1972年4月14日、北海道静内(現新ひだか町)産の青毛の牝馬。父テスコボーイ、母キタノリュウ(母父モンタヴァル)。馬主は長島忠雄氏。仲住芳雄厩舎(東京)で10戦7勝。全戦菅原泰夫騎手が騎乗。主な勝ち鞍は74年京成杯3歳S、75年京成杯、阪神4歳牝馬特別、桜花賞、オークス。74年最優秀3歳牝馬、75年最優秀4歳牝馬。5歳1月に青森県の放牧先で心臓まひのため急死。現在は新ひだか町の桜舞馬公園に埋葬されている。

