「素手でたたいて馬は速く走るのか?」-。

先週日曜(11日)に行われた仏1000ギニーの降着騒動が大きな話題となっている。繰り上がりで1着になったザリガナのミカエル・バルザローナ騎手が最後の直線でステッキ(ムチ)を落とし、素手で10回以上たたいたことを、2着降着(1位入線)となったシーズパーフェクト陣営が問題視。降着の理由とされる妨害行為の確認と合わせて、フランスギャロに対し、異議申し立てを行っている。フランスギャロの規定ではレース中にムチで9回以上たたくと失格の可能性があるとされているが、手(素手)の使用に関しての規定はない。

今回の話題で、日本の競馬ファンが真っ先に名前を挙げるのが、05年朝日杯FSで3着だったジャリスコライトのケント・デザーモ騎手だ。新馬、いちょうSを連勝し、1番人気で臨んだG1。米国から来日していた名手デザーモが最後の直線でムチを落とし、懸命に素手で叱咤(しった)したシーンは“手ザーモ”という造語とともに語り草となっている。レース中にステッキを落とすアクシデントは多くのジョッキーが経験するもの。現役のジョッキーに聞いてみると…。

「手ムチはやったことありますが、特に意味はないと思います。そもそも、ムチで馬を速く走らせるという感覚は持っていません」。

「ムチは加速させるための合図だったり、真っすぐ走らせるために使うもの。映像を見たけど、ゴール前で馬が気を抜かないように励ましているのだから」。

「ムチのルール(使用回数の制限など)は馬に対してどうこうではなく、動物愛護でどう思うか、ですよね。手ムチは意味ないですよ。ムチを落としたときにやったことはありますけど、馬主さんや先生(調教師)に『なんで追わなかったんだ』と言われないためにやったこと。そのときのレース後は『(手ムチの)効果はありました』って言いました」。

「(今回の仏1000ギニーの件は)馬が寄れて(1位入線馬が)降着になるのはわかりますけど、手ムチで処分されるとしたら、ジョッキー(バルザローナ騎手)がかわいそうです」。

仏1000ギニーの1週前に米国で行われたケンタッキーダービーでは勝ったソヴリンティのジュニオール・アルバラード騎手が使用回数制限を超えてムチでたたいたため、高額の罰金処分(以前の制裁との加重制裁で約900万円)を受け、米国内では波紋を呼んでいる。昨夏に北海道で行われたアジア競馬会議のエキシビジョンセッションではJRA所属のトップジョッキーが世界で厳格化されるムチの使用回数制限に提言。ルメール騎手は「馬をムチで打つことは、馬に痛みを与えることではなく、真っすぐ走らせるなどのサインを出すことです。そういうことをみなさんに周知していけばいいと思います」と訴えている。