マダイのエキスパートになる! 11月で釣り担当になって丸1年、日刊スポーツ入社2年目の私、松尾幸之介が、横浜・金沢八景の「太田屋」でのマダイ釣り教室に参加してきました。「どんな釣りにも通じる」というマダイを基本から学び、釣り記者としてのステップアップを目指します。この日は潮の流れが悪く、厳しい釣果となってしまいましたが、常連客のみなさんがさすがの技術と経験で、お手本を見せてくれました。

 太田屋のマダイ教室では、日刊釣りペン・クラブの加藤雄二さんが長年講師を務めていたが、その加藤さんが今年2月に急逝。3月に常連の新井利行さん(53=横浜市)を講師に迎えて教室が復活し、約8カ月後のこの日が2度目の開催となった。参加者は記者を入れて9人。出船前に屋内でコマセを使ったマダイの釣り方を太田一也船長や新井さんが説明し、ベテラン含む13人が乗り込んでサオを出した。

 最も重要なのはタナの取り方だ。細かな数字計算が必要な上、魚との駆け引きの要素も含まれることから、マダイを楽しむ釣り人の多くが魅力に挙げる点でもある。船長によると、タナの取り方は人それぞれというが、初心者の我々は、まずオモリを底につけて上げる取り方、次に上から直接合わせていく取り方を実践した。記者の隣に座った、釣り歴40年以上の常連・斉藤秀夫さん(69)は「コマセをまき、エサの小エビを落として5分ほど待って、その食い方を観察する。そして周りの人のエサの様子も見ながらタナを少しずつ動かしてマダイのいる層を探るんだ。そうすればビギナーだって釣れるよ」と教えてくれた。

 しかし、この日はそんなベテランも頭を抱える食いの渋さに苦しんだ。昼を過ぎても、釣れるのはショウサイフグやサメなどの外道ばかり。潮の流れも悪く、前日までに降った雨と気温の低下の影響で、マダイの動きも鈍くなっていた。

 諦めかけていた沖上がり時間間近の午後2時すぎ、潮が動き始めたタイミングで斉藤さんのサオが大きくしなった。「きたよ、きたよ」。この日一番の大きなアタリに、船上も沸いた。釣れたのは2キロ弱の美しいマダイ。「やっと釣れたよ~」。斉藤さんは安堵(あんど)の表情を見せたが、すぐに顔を引き締め「今が時合いだから、集中したほうがいい」とささやいた。

 その言葉の通り、他の釣り人にもマダイがヒットした。こちらも常連の梶本忍さん(57=埼玉県新座市)が同サイズのマダイを釣り上げた。「タナはハリスからプラス2メートルぐらい。やっぱり自分でタナを見つけて釣るところが楽しいんだ」と笑顔を見せた。

 会社の同僚と受講した紅一点の杉浦佳美さん(34=さいたま市)もクロダイをゲット。「マダイはテンヤでやっていましたが、コマセは初めて。船に乗ったあとも親切に教えてもらえたのがよかったのかな。また来たい」。

 クロダイの写真を撮ろうと記者が自分のサオを離れたちょうどその時、「ブルルンッ」。待望の当たりだ。急いでサオに戻ったが、時すでに遅し。バラしてしまった。「今のは大きかったよ。おそらくマダイ。惜しかったね」。斉藤さんがなぐさめてくれた。ドラグをしめていたため、糸があまり出ずに切れてしまったようだ。マダイは食うと一気に引っ張るため、ドラグの調整も大事だという。

 結局、この日釣れたマダイは計3枚。普段は10~12枚は釣れるというから、厳しい釣行となった。そう簡単には釣らせてくれないからこそ、面白い。マダイとの戦いはまだまだ続く。【松尾幸之介】

 ▼船 日刊スポーツ新聞社指定「太田屋」【電話】045・782・4657。マダイの乗合は午前7時20分出船でエサと氷付き1万500円。カップル、親子には割引あり。ほかライトタックル(LT)アジ釣りの午前&午後便とルアーの五目釣り船、エギスミイカなども出船中。木曜日定休。