競輪担当に戻って1年少々が経過したこの2月、デスクに呼び止められた。

「3月末に大阪で自転車の大きなイベントがある。そこに競輪選手が主催のレースがあるみたいだよ」

昨年9月のスフィダーレ・クリットにゲスト参加したテオ・ボス(左)と児玉利文
昨年9月のスフィダーレ・クリットにゲスト参加したテオ・ボス(左)と児玉利文

3月30、31の2日間、JR大阪駅近郊の「うめきた2期区域」で行われる「アーバンバイクロア大阪」。そこで行われるレースカテゴリーの1つ「トラックバイク・クリテリウム」を主催するのが、児玉利文(44=岐阜)だ。これまでも地元の岐阜で3度「スフィダーレ・クリット」として開催。その4回目として、大阪での開催が実現したという。

昨年9月のスフィダーレ・クリットのスタート直前
昨年9月のスフィダーレ・クリットのスタート直前

とはいえ、この記事を読んでくださるユーザーの方々、何より私自身もまだまだわからない部分が多すぎる。そこで大まかな説明をしておきたい。

昨年9月のスフィダーレ・クリットのレース風景
昨年9月のスフィダーレ・クリットのレース風景

クリテリウムとは1周約3キロ程度の市街地周回コースで、略してクリット。スフィダーレはイタリア語で「挑戦」。「挑戦する周回コース」と名付けた自転車競技で使用するのはトラックバイクでノーブレーキの固定ギア。スキッド走法(後輪を滑らすドリフトのようなもの)は禁止で、スピードを緩めるにはロックさせないようにバックを踏むしかない。それでヘアピンに近いカーブのあるコースを、最速50キロで周回し順位を競う。

もともとは米国のメッセンジャー(自転車便)たちが、誰が一番速いのかを、深夜に非合法で行っていたものを、10年ほど前に競技化した。ブルックリンで「レッドフッククリット(以下RHC)」というレースがスタートした。今回もこのRHCのルールに則りレースが行われる。

昨年9月のスフィダーレ・クリットであいさつする児玉利文
昨年9月のスフィダーレ・クリットであいさつする児玉利文

児玉がRHCを知ったのは2年前。岐阜県内で「104サイクル」というサイクルショップを経営していて99年アジア選手権チームパーシュート優勝など競技歴は豊富だ。交流の幅も広く、小牧市在住でカナダ出身の友人からRHCのことを知ると、17年4月のニューヨーク大会に初参加。その魅力に取りつかれた。

児玉 ノーブレーキで直角に近いカーブやUターンに挑むスリル。競技+ゲームのイメージで、ショーアップが上手だし、お客さんもビール片手に応援したりしている。スケボーの大会のような観客のノリだった。

ただ国内では全くマイナーな競技。困ったのは練習場所だ。児玉は近隣の平田リバーサイドプラザに許可をもらい練習場所を確保した。17年9月に第1回、18年4、9月にも大会を開催し、月1度のペースで講習会を開くなど、率先して裾野を広げる活動も行った。9月の大会には思わぬ大物もゲスト参戦した。

児玉 国際競輪の短期登録選手で日本の競輪に参戦していたテオ・ボスが来てくれたんです。

アテネ五輪のメダリストで、世界選手権では何度も頂点に立ったトラック界の超大物が参加し盛り上がった。そして今回は岐阜以外では初の国内開催となる。

児玉 1回目は20人の参加枠。今回は60人の参加枠が数分で埋まった。

児玉を中心に、この競技を愛する周囲の協力を受けて実現した「スフィダーレ・クリット」大阪大会。「バイクロア大阪」自体が自転車の祭典と銘打つだけに、自転車好き、興味のある人はぜひ観戦してほしい。私自身も休日予定の31日は、会場に足を運ぶつもりだ。【オカダ】

※写真はすべて児玉利文氏の提供