フットボール金融論 ~レアル・マドリードMBA卒・酒井浩之~

横浜の財政状況で見る欧州と圧倒的に違う放映権収入

最終節までもつれ込んだJリーグですが、今回は少しだけそのJリーグを15年ぶりに制覇した横浜F・マリノスをのぞいてみたいと思います。

15年ぶりの優勝を決め、サポーターと一緒に記念撮影する歓喜の横浜イレブン(2019年12月7日撮影)
15年ぶりの優勝を決め、サポーターと一緒に記念撮影する歓喜の横浜イレブン(2019年12月7日撮影)

2019年5月に発表された2018年度の最新の財務状況を見てみると、売り上げで約51億円となっており、その中でも営業利益が約1900万円、経常利益が約800万円、純利益が約200万円とされており、ここから数字だけ見てみると、営業利益率は0.37%という低い数字になります。一言で言うと、営業で上げた売上金額とほぼ同額が支出で出て行っているということになります。

さらにその中で営業売上の中身を見てみると、

広告収入:約20億3300万円(約40%)、チケット収入:約11億2700万円(約22%)、物販収入:約5億7000万円(約11%)、その他:約13億7000万円(約27%)※アカデミー関連収入やリーグ分配金など

となっております。

一方、支出の方を見てみると、チーム人件費:約23億円(約45%)、試合関連経費:約3億5000万円(約6.8%)、トップチーム運営経費:約4億円(約8.0%)、アカデミー運営経費:約2億円(約4.0%)、物販など:3億8000万円(約7.4%)、その他管理費など:14億7000万円(約29%)となっており、欧米クラブ同様人件費が非常に高くなっていることがわかります。

この現状を少し前と比べるとどうでしょうか。2014-15年シーズンと比べると、実は広告収入自体は3000万円弱ほどマイナスになっています。同時にアカデミーでの収入も1億円ほどマイナスに計上されております。全体で見ると2018年度の方が入場料(1億7000万円のプラス)、Jリーグ分配金(1億4000万円のプラス)、その他収入(7億8000万円のプラス)はそれぞれ増えております。支出面を見てみると。支出全体自体では5億3000万円ほど増えており、そのほとんどが人件費の増加となっております。

こういった状況を見ておりますと、欧州のクラブとの収入面での圧倒的な違いを1つだけ感じます。それは放映権収入です。欧州ではクラブの収入の30%ほどがテレビ放映権で構成されており、これが大きく影響しています。クラブの収支自体は利益がないことは今まででもリポートしてきた通り、欧州もそこ自体はあまり大きく変わりません。私はテレビの放映権で稼げている分で、選手の補強にお金が回っていると見ています。Jリーグでよりお金を回していくことを考えるのであれば、いかにJリーグの放映権を外国に売るかということになると思います。

いろいろな制約があり、簡単な話ではありませんがアジアのお金のあるところに対して、Jリーグの放映権を高く売ることが求められます。実は2019年10月にサッカーJリーグの海外放映権を取得したと、株式会社電通が発表しました(国内放映権はダゾーンが保有)。しかし中国だけは除かれており、欧州サッカーに対して一番お金を出している大国が除かれていることが気になります。基本的にはお金のあるところに営業をかけるというスタンスからすると、中国の選手を獲得し、チャイナ・マネーを日本に入れることを考えなくてはいけないとは感じますが、実現できていないというのが現実です。プレミアリーグでアジア人のオーナーが出たりと、今や東南アジアの力は本当に大きくなりつつあり、その中でも東アジアの力はまだまだ大きいと言えます。政治とスポーツを切り離して、Jリーグに中国代表クラスの選手を迎え入れるようなことができれば…。

スペインリーグのエスパニョールで起こっているような中国代表ウー・レイ選手にみるフィーバーが新たに日本で起こり、そしてそれがより大きな力となってJリーグの屋台骨となる気がしてなりません。【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)

◆酒井浩之(さかい・ひろゆき)1979年8月24日、愛知県生まれ。幼少時よりサッカーに打ち込み、大学卒業後は広告代理店やスポーツメーカーに勤務。2015年3月にレアル・マドリード大学院スポーツマネジメントMBAコースに日本人として初めて合格。卒業後、レアル・マドリードへ同コースから唯一選出され入社。17年6月退社。現在はスペインと日本を行き来しながらスポーツビジネスのコンサルティングなどを手掛けている。

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