レアル・マドリードにも移籍が噂されていたデンマークのクリスティアン・エリクセンがついに移籍を発表しました。移籍先はイタリアのインテル。2010年にサンティアゴ・ベルナベウで行われたチャンピオンズリーグ(CL)決勝でチャンピオンになり、この年に3冠を達成。そのインテルが復権を睨んで新オーナーのもと、着々とプロジェクトを進めています。そのインテル相手に取引を成功させたのが今回のテーマにもなるロンドンビッグ4の一角でもあるトットナム・ホットスパーズ。実はこのチームは選手売却益を生み出すことがとても上手なチームでもあります。今回はその選手売却の妙技をのぞいてみたいと思います。

今回のエリクセンの移籍については、レアル・マドリードが狙っていると報道が出ましたが、違約金は5500万ユーロ(約65億円)とも言われていました。しかしふたを開けてみると、最終的にはエリクセンの移籍金は2000万ユーロ(約24億円)とも報道されており、当初の半額以下の金額で落ち着いたことになります。レアル・マドリードは2020年夏の契約満了後のフリー・トランスファーでの移籍を狙っていたとも言われていました。真相は不明ですが、移籍金を出してまで獲得するべきかどうか検討された可能性もあります。さて、そのエリクセンですが、アヤックスから移籍した時のことを掘り返してみると、トットナムが支払った移籍金は1350万ユーロ(約16.2億円)と報道がありましたから、これが正しければ650万ユーロ(約7.8億円)の売却益を得ていることになります。色々な報道がなされていますが、現地での報道をベースに計算するとこのようなディールになるようです。(移籍金の10%がアヤックスに戻るという報道もありましたがこちらは割愛しております)。

同じように、クロアチア代表MFモドリッチ は2008年にトットナムへ移籍金2300万ユーロ(当時のレートで約37.6億円)で加入も、2012年に移籍金約4200万ユーロ(当時のレートで約53億円)でレアル・マドリードに移籍。この差額を単純計算すると、15.4億円になります。

さらに今話題のウェールズ代表FWベイルは、サウサンプトンからトットナムに移籍した時は約700万ポンド(当時のレートで約11億円)と言われておりました。レアル・マドリードに移籍する際は総額1億75万9418ユーロ(約131億円)などという金額と言われておりますから、実質このディールだけでみると日本円で約120億円の売却益になります。これだけみても、とてつもない大きさの利益金額になります。

このように基本的にお金がないクラブは上手く売却益を出しながら運営が求められる訳なのですが、当然失敗する例もあります。多額の金額を費やして獲得するも鳴かず飛ばずになり、金額が上手く付かずに出ていくケースもあります。今回はその具体的な例には触れませんが、そのトットナム自体はそこまで大きなクラブではありません。(だからこそ選手売却益が大切なのですが。)

売り上げという点でのお話をすると、2019年4月に発表されたトットナムのレポートを見てみると、2017-18シーズンの売り上げは、過去最高の3億8070万ポンド(前年:3億970万ポンド)でしたが、選手売却取引を除いた営業利益、いわゆる減価償却前の税引き前利益は1億6250万ポンド(前年:1億2090万ポンド)とありました。1ポンド143円で計算して約550億円の売り上げで利益が約232億円ですから、かなり大きな利益が出ているように見えます。レポートによると、ホームスタジアムの改修につき、試合をウェンブリースタジアムで行ったこと、そしてチームの好成績という2点が主な要因であるとされておりました。(この費用を元に選手取引を行っているので、取引後は当然のこと、さらに利益は小さくなっております)。これらの背景を見てみると、高額選手の買い戻しなどが噂されることにも理解はできます。さらに現監督のモウリーニョを持ち込んだエージェントサイドの目論見もこう言ったところから来ているとすれば、多くの関係者がこのチームに目を向けていることがわかります。【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)