フットボール金融論 ~レアル・マドリードMBA卒・酒井浩之~

経費削減? 様変わりを見せるスペインのクラブ

これまでも扱ってきた各クラブの経済状況ですが、大切なのは収入面だけでなく、コスト面をみるということを念頭に置いて述べさせていただきました。そんな中、つい先日のことですが、スペインリーグにおけるサラリーキャップの金額について現地で報じられました。これはどういうものかというと、「移籍金の減価償却費及び選手年俸」と翻訳することができますが、簡単にいうと、「選手の年俸と選手の移籍金の分割払いの残債」というとわかりやすいかと思います。つまり、クラブのコストで一番大きな部分である人件費のお話になります。スポーツ組織の難しいところは、通常のオフィスワーキングに加えて、ほぼコストになり得ると言っても過言ではない大きな「人件費=選手の給与」が加わり、これが人件費過多になってしまうところにあります。今回、現地メディアが報じた数字を並べてみると、次のようになります。


1、バルセロナ   6億5640万ユーロ(約787億6800万円)

  *2019年9月と比べ1500万ユーロ(約18億円)減

2、レアル・マドリード  6億4110万ユーロ(約769億320万円)

  *前回からの変動なし

3、アトレティコ・マドリード  3億4850万ユーロ(約418億2000万円)

  *前回からの変動なし


この3チームに絞って話を進めると、2020年1月に発表されたデロイトのフットボールマネーリーグ2018-19シーズンにおける各チームの売り上げは以下のようになります。


バルセロナ  9億5930万ドル(約1055億2300万円)

レアル・マドリード  8億6400万ドル(約950億4000万円)

アトレティコ・マドリード  4億1940万ドル(約461億3400万円)


ドル・ユーロの表記になるので、円で統一して売り上げとサラリーキャップを収入面と比較してみます。

バルセロナは単純に約267億5500万円のプラス、レアル・マドリードは181億3680万円のプラス、アトレティコ・マドリードは43億1400万円のプラスとなります。

これだけをみると、プラスの計算になりますが、各クラブの売り上げ比率からすると、約3分の1を占めるといわれているチケット収入の比重がとても大きなものに感じます。つまり、単純計算でレアル・バルサは約300億円ほどありますから、少しでもチケットが売れなくなってしまうと、当然スタジアム離れが起き、グッズ収入が減るなどし、すぐに赤字へと転落してしまいかねないという、とてもリスクの高い状況であることを理解しなければなりません。

そんなヨーロッパクラブと打ち合わせを繰り返す中で、近年感じる変化があります。今までであれば、スポンサーサイドやライセンスを購入する側は、クラブの抱える大多数のファンによる売り上げを期待します。そして、それに対してクラブの協力があって商品が売れる、情報が行き渡ることに期待をしていました。ところが、ここ1、2年の間にその様子が少し変わってきたように感じます。クラブは基本的に何もしないというスタンスがより強くなっており、いかに労力を使わず、何もしないで売り上げを取ることができるのかということを考え始めたような気がします。つまり、一言で言うと、商品を作るのも売るのも自分たちの仕事ではないというスタンス。こういう形でクラブからの協力が得られないとなると、ライセンスを購入したり、スポンサードに対してお金を払う側はビジネスにおいて期待できる部分が小さくなり、とても難しくなるように感じます。

この1月は新たな選手の動きはあまり多くはなかったような気がします。これは単純に選手獲得に対する金額の高騰などがあるのでしょうが、徐々に活性化が難しくなるような感覚を抱きます。この後ヨーロッパ市場は欧州選手権(6月12日開幕。12都市で分散開催)があり、そこでの活躍によって8月以降のマーケットがさらなる活性化となるのか、とても楽しみではありますが、一方でクラブの腰がますます重くなってきていることが気になります。【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)

◆酒井浩之(さかい・ひろゆき)1979年8月24日、愛知県生まれ。幼少時よりサッカーに打ち込み、大学卒業後は広告代理店やスポーツメーカーに勤務。2015年3月にレアル・マドリード大学院スポーツマネジメントMBAコースに日本人として初めて合格。卒業後、レアル・マドリードへ同コースから唯一選出され入社。17年6月退社。現在はスペインと日本を行き来しながらスポーツビジネスのコンサルティングなどを手掛けている。

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