G大阪FW宇佐美貴史(22)が、ハリルジャパン定着へさらなる進化を遂げる。新生日本代表は25日、初陣となるチュニジア戦(27日、大銀ド)に向けて大分市内の試合会場で練習し、冒頭の15分以外を非公開とした。2年4カ月ぶりに代表復帰した宇佐美は、1試合におけるスプリント(時速24キロ以上のダッシュ)回数はFW岡崎慎司、乾貴士のわずか4分の1程度。課題の走力に磨きをかけ、18年のW杯出場を目指す。

 大分は雲1つない青空が広がった。宇佐美は代表デビュー戦に向け、着々と準備を進めた。冒頭15分だけの公開となった練習では、岡崎や同い年のMF柴崎らとパスを回し、会場の感触を確かめた。ハリルホジッチ監督が笛を吹くと、ダッシュで集合。明日の1戦を待ち望むかのようにリズム良く全員でアップした。

 「攻撃の部分で出来ることは自分なりにある。それでも(監督には)守備を求められるので、アピールしていかないといけない」

 越えなければいけない高い壁がある。DFの裏への飛び出しなど、FWがトップスピードで攻撃参加した指標となるスプリント回数。宇佐美は得点を挙げた22日の甲府戦でわずか8回。一方、運動量は世界一とされるドイツで活躍する乾と岡崎は21日、22日のリーグ戦でともに33回を記録。今季の後半戦で乾は最高54回、岡崎は46回という数字を出している。前節の33回は2人にとって最高値ではなく「平均以下」。それでも宇佐美の4倍以上だ。

 走力不足はこれまでも指摘されてきた。清水時代の岡崎と、宇佐美を指導するG大阪長谷川監督は「貴史は、去年に比べればスプリント回数は確実に増えている」としながらも「オカ(岡崎)は(スプリント距離が)1試合で800メートルは走るけど、貴史は200メートル。その開きはある」。02年からW杯4大会連続で分析スタッフ、アシスタントコーチとして日本代表を支えたG大阪和田コーチも「オカもC・ロナウドも極端に言うと歩いているかスプリントをしているか、どっちかしかない。貴史もそれぐらいを目指してほしい」と積極的な攻撃参加を求めた。

 同じく今季から開示された走行距離でも、課題は明白だ。甲府戦の宇佐美は9・98キロで、今季1番の運動量だった。それでも同い年のFW武藤と約3キロ、岡崎と約1キロもの差がある。世界で戦うには、走力の底上げが求められる。

 自らの課題を乗り越えるため、宇佐美は「ブンデスの選手の運動量は、参考にしていきたいですし、していかないと。その中で、自分の色という物を出さないといけない」。W杯ロシア大会まであと3年半。まずは念願のA代表デビューを果たし、不可欠な存在へと成長を続ける。【小杉舞】