日本代表・森保一監督の顔は紅潮していた。試合後のインタビュー。少し充血した目で「このアウェーの地で、選手たちが簡単な戦いにならないだろうと覚悟しながら我慢強く戦ってくれて勝利をもぎとってくれた」と絞り出した。

タジキスタンに決定機を許すなど前半は0-0で終えた。勝負の後半、南野と鎌田が話し合いでポジションチェンジしたのを「位置を決めつけない」と自主性を尊重し、試合を動かした。エースに据える南野が2得点し、後半途中に投入したFW浅野がとどめを刺した。モンゴル戦から移動を含め中4日で敵地での大一番という過密日程の2連戦を、公約通りの2連勝で終えた。

タジキスタン出発後、日本列島は台風19号に襲われた。出発前、指揮官は台風の脅威を予想するニュースを気に病んでいた。「スポーツの話題で盛り上がるコミュニティーができることは活動を通してやっていきたいこと。ぜひ国民の皆さんが笑顔で楽しい話ができるよう、元気になっていただけるような話題をお届けできるようベストを尽くす」。代表として、一丸となって勝利を贈る使命感を胸に決戦の地へ旅立った。

敵地到着後も、心は日本にも向けていた。前日会見では真っ先に被災者への思いを述べた。試合では喪章を着け、犠牲者を悼んで黙とうをささげて臨んだ。過密日程を克服すべく代表初先発のFW鎌田ら4選手を入れ替えた。起用した選手たちが不慣れな人工芝の上を懸命に走り、愚直にもぎとった勝ち点3。「選手たちも被災地、被災者に励ましになるプレーを届けるということ、応援してくれる方々に勝利を届けるという強い気持ちを持って戦ってくれた。思いが届けば幸い」とうなずいた。