浦和MF李忠成(30)が貴重なダメ押し弾で「見えすぎ逸機」の埋め合わせをした。

 後半5分。FW興梠とのパス交換で柏の守備ブロックを打破。興梠が身体を投げ出しながら出した浮き球パスを、自らも身体を投げ出しながらの左足ボレーで合わせた。うまく浮かせたループ性のシュートは、柏の五輪代表GK中村の頭上を破り、ゴールネットを揺らした。

 「前半に決定機を外してしまったけど、勝利が近づくゴールが取れたので、今日は良しと考えたい」。前半29分、自陣深くからのカウンター攻撃は、興梠の右クロスをへて最後は李。GK中村との1対1になったが、シュートはクロスバーのわずか上に外れてしまった。

 「やってしまいました。ああやって1対1になった時に、相手GKが前に出てくるのは知っていました。彼の得意な飛び出し方を、事前に映像で見ていたので。あまりにもGKの動きが見えすぎたので、ついついうれしくなりすぎた」

 中村が飛び出してくるのを見計らって、頭上を破る狙いは完璧だったが「うれしすぎた」分だけわずかにシュートが強くなった。

 この時は裏目に出たが、李が出たところ勝負ではなく、試合前の綿密な調査を踏まえて、決定機に臨んでいることが分かるエピソードになった。

 しかも「理詰め」でダメなら「即興性」「感性」でと、後半にまったく違うプロセスで美しいゴールを決めて、見事に埋め合わせた。

 痛い失敗と、歓喜の得点。李が90分の中で、ストライカーとして持ち合わせるさまざまな顔を、いっぺんに表現してみせた。