スポーツ教育を展開する「バディスポーツ」が、43年蓄積の実績と経験で中学の部活動も充実させようとしている。

1980年(昭55)に「スポーツ教育と女性の社会進出の充実」など、今なら当たり前の価値を求めてバディスポーツ幼児園が開園した。朝の登園と同時にジョギングや体操で始まり、サッカーなどボール遊びで、2歳~5歳までの園児が楽しく体を動かす。もちろん折り紙や歌、絵を描くなど、普通の幼稚園が実施しているようなことも充実にこなす。

鈴木威代表は「特に力を入れているのは、目標を立ててその達成に向けて努力していくことを幼い頃から徹底している。うちの幼児園は三点倒立、逆上がり、跳び箱6段ができないと卒園できない。最初はできない子ばかりですが、今までこの3点ができなくて卒園できなかった子はいない。他にも300メートルを60秒で走るとか、水泳だったり。常に目標を掲げて、園児たちはそれがクリアできるように自分で考えて努力してくれている」と話す。

43年の歴史で、数多くのオリンピアンを輩出した。卒園者には、Jリーガーも14人いる。W杯カタール大会1次リーグのスペイン戦で決勝点を挙げたMF田中碧(デュッセルドルフ)や元日本代表でJ1神戸所属FW武藤嘉紀もバディスポーツでサッカーボールを追って、グラウンドを駆け回った。WEリーグやなでしこリーグ所属選手も数知れない。

スポーツ教育のノウハウは今、中学の部活動にも生かしている。政府は17年、部活動指導員の制度化を実施し、外部指導者の活用を取り入れた。バディスポーツは、各自治体に働きかけ、外部コーチの派遣に力を入れており、現在は東京・稲城市と茨城・守谷市の中学校にサッカーやテニス、ブラスバンドなどの専門コーチを送って部活動をより専門的で高いレベルに引き上げるなど、充実させている。

現在、他の都道府県にも広げる努力をしているが、現実はそんなに甘くない。政府は外部指導員制度の実施を決めたものの、予算は自治体に任せているため、コーチを雇うための資金作りが難しい。そのため、ふるさと納税を利用し、ほそぼそ続けているのが現状だ。鈴木代表は「園児の保護者にもふるさと納税をお願いしているが、限界はある。今後、予算も含めて国主導でシステム化してくれれば、もっと充実した部活動ができるはず」と期待した。

同代表の目標は、五輪に日本代表を何人出すか、サッカーW杯に卒園生が出るかなど、スポーツに限るものではない。「スポーツ選手だけを育てようとは思いません。卒園生がそれぞれの職業、専門分野で輝いてくれればいいんです。その小さな輝きが1つ1つ集まれば、日本は大きな光を世界に放つことができる」と話した。

まだ構想段階だが、将来的には非認可小学校の設立も夢見ている。「英語とスポーツ、ITと金融に特化した教育ができるような小学校を作りたい。インターナショナルスクールのようなイメージですね。世界はどんどん変化します。その変化に対応できるように、子供の時から知識を吸収することが必要です」。

小学校が定着すれば中学校、さらに高校と、日本の教育制度に新しい風を吹き込むことができるかもしれない。鈴木代表の挑戦は、限界を知らない。【盧載鎭】