さあ、いよいよW杯が開幕する。とっくに開幕しているでしょ、という指摘もあるだろうけれど、毎回決勝トーナメントの組み合わせが決まると、新しい気持ちになる。ここまでの大会は「1次リーグ」と表記するが一般的には「予選」と言われることも多い。これからが「本選」なのだ。

 組み合わせを見ていて楽しいのは、どこが勝ち抜くかを予想すること。1次リーグでの調子から過去の対戦成績、W杯ならではのジンクスなど、さまざまな要素を加味して議論は白熱する。W杯ファンなら、これだけで一晩は酒が飲める。

 優勝国はどこか? 常に候補に挙がるイタリアが欧州予選で敗退し、候補筆頭と言われたドイツも1次リーグで消えた。ブラジルもいまひとつだし、アルゼンチンもメッシ頼み。「該当チームなし」と言いたいところだが、必ず優勝国は出る。では、どこが勝つのか。

 優勝国には、いくつかのジンクスがある。有名なのは「外国人監督は優勝できない」。つまり、優勝するには自国の監督が指揮する必要がある。前回ブラジル大会も、4強はすべて自国監督。やはり、独自のサッカー文化をまとめるには、文化を知る監督がいい。決勝トーナメント進出16カ国のうち、自国監督でないのはデンマーク、スイス、メキシコ、ベルギー、コロンビア。残るは11カ国だ。

 「20年周期で新チャンピオンが誕生」というのもある。20年前の98年大会でフランスが初優勝、さらに78年大会ではアルゼンチン、58年大会ではブラジルが初制覇した。今年は新しい優勝国が誕生。つまり、優勝経験国は優勝できない。スペイン、ブラジルなど6カ国が消え、残りは5カ国。

 もう1つ。「前年にバロンドールを受賞した選手の国は勝てない」。前回大会はロナルド擁するポルトガルが1次リーグ敗退、10年大会のメッシ、06年大会ではロナウジーニョも、ベスト8で消えた。過去15人が挑戦して優勝0。今回も、ポルトガルは負ける。残るはロシア、クロアチア、スウェーデンと日本だ。ブラジル、フランスなどが同居する「死のサイド」で、優勝する「資格」があるのは日本だけ。ジンクスから割り出すと、日本の優勝もあり得るということだ。

決勝トーナメント進出が決まり、笑顔を見せる西野朗監督(2018年6月28日撮影)
決勝トーナメント進出が決まり、笑顔を見せる西野朗監督(2018年6月28日撮影)

 決勝トーナメントは一発勝負。何が起こるか分からない。確かにベルギーとは実力差はあるが、1回の勝ち負けなら結果は分からない。突破すれば、次のブラジル戦では「マイアミの奇跡」再現も期待できる。W杯の歴史に残る好ゲームで勝ち上がってほしい。

 「妄想」かもしれない。でも、30年前はW杯に出ることすら「妄想」だった。90年にカズがブラジルから帰国し「目標はW杯出場」と言った時、真剣に耳を傾けるメディアはほとんどいなかった。しかし、それはすぐに「現実」になった。

 02年のように16強で満足したり、10年のように力を出し切っていたりという感じはない。今の日本代表は西野監督も選手たちも8強以上を真剣に考えているはずだ。だからこそ「妄想」はふくらむ。もっともっと、楽しませてほしい。

日本対セネガル 後半、同点ゴールを決めて喜ぶ本田(右)。中央は柴崎、左は長谷部(2018年6月24日撮影=PIKO)
日本対セネガル 後半、同点ゴールを決めて喜ぶ本田(右)。中央は柴崎、左は長谷部(2018年6月24日撮影=PIKO)