また、最後にドイツが勝った。前回大会優勝のドイツは、スウェーデンに先制ゴールを許して崖っぷち。後半3分に追いついたものの、後半37分にはDFボアテング(29)の退場で10人になり1次リーグ突破がピンチになった。それでも不屈の「ゲルマン魂」で、後半ロスタイムにMFクロース(28)が劇的ゴール。2-1で競り勝ち、決勝トーナメント進出に望みをつないだ。

 49分39秒、5分あったロスタイムのラストチャンスだった。ペナルティーエリア左外でFKを得たMFクロースは、1度MFロイスに預けて角度を変えたボールを右足でシュート。ゴール右サイドネットに突き刺すと、雄たけびをあげて左こぶしを突き上げた。失点につながるパスミスを帳消しにして「僕らがここで負けたら喜ぶ人も多いかもしれないけど、そう簡単にはいかない」と胸を張った。

 負ければ敗退が決まる試合、レーウ監督は大胆に動いた。メキシコ戦からエジル、ケディラらを外し、スタメンを4人変更。GKノイアー以外は20代という若いチームで必勝を期した。しかし、圧倒的に攻めながらもゴールは遠い。後半37分にはボアテングが2度目の警告で退場。1-1なら決勝トーナメント進出が苦しくなるピンチを、クロースの右足が救った。

 伝統の勝負強さは、健在だった。最後まであきらめず、追い込まれるほど力を発揮する「ゲルマン魂」。1点リードされて迎えたハーフタイムには、レーウ監督が「パニックになるな。我慢を忘れるな」と指示。ミュラーは「自分たちを信じて最後までプレーした。そうすれば報いられると信じていた」と言った。元代表のブッフバルト氏は「初戦と違ったのは気合の入り方だ」と、そのメンタルの強さを絶賛した。

 優勝回数は4回でブラジルの5回に次ぐが、決勝進出は8回と最多。最近は4大会連続で最低準決勝まで進み、今大会も優勝候補にあがる。現実的で面白みがないとされるスタイルは変わらないが、移民系の代表選手も多くなって精神面での弱さは指摘される。ベッケンバウアー、マテウス、カーンら闘将も不在で、試合中に怒鳴り合う場面も見なくなった。それでも、ドイツを支える「強いメンタリティー」は不変。世界が舌打ちする中、頂点を目指してドイツは勝ち進む。