ブラジルが3戦目でやっと快勝した。2-0でセルビアを下し、E組1位で1次リーグ(L)を突破した。ネイマールはCKでのアシストと“脇役”にとどまったが、攻守にスキを見せずに勝ちきった。前回覇者ドイツが敗退、同準優勝のアルゼンチンが薄氷を踏む思いで決勝トーナメント(T)進出にこぎつける中、6度目の優勝を目指す「王国」は尻上がりに調子を上げてきた。決勝T1回戦ではメキシコと対戦する。

 初戦スイス戦は引き分けどまり、2戦目のコスタリカ戦は後半ロスタイムでのゴールで冷や汗勝利、この日はやっと本来のブラジルらしさが出た。「今夜はカイピリーニャ(ブラジルのカクテル)を自分にごちそうしてあげるよ、1杯だけね」。チチ監督の言葉が、13大会連続の1次L突破を決めた安堵(あんど)と、手応えをうかがわせた。

 フィジカルの強いセルビア相手に試合運びがうまかった。「ネイマールでなくても、誰だって主役になれる」(同監督)。前半36分の先制点はパウリーニョが決めた。コウチーニョの縦パスに走り込み、相手DFの間を抜け、前に出たGKより先に右足先でとらえての浮き球シュートだった。後半23分の追加点はベテランDFチアゴシウバ。ネイマールの左CKに頭を合わせ、たたき込んだ。

 「バランスが大事」という監督の指導の下、全員で戦った。ネイマールもチームプレーに徹し、倒されても感情を抑え込んで、走り続けた。2-0の後半30分過ぎには、GKを除く10人全員が関与して2分以上もボールを回し続けた。右へ左へゴール前へと緩急をつけ、相手を振り回して消耗を誘った。

 攻撃ばかりが注目されるが、相手を枠内シュート1本に抑え、これで直近14試合でわずか3失点。守りも堅いのが、今回のチームの特徴だ。

 選手層の厚さも見せた。前半10分でマルセロが背中の不調を訴えて交代を申し出た。既に大会に入ってダニーロ、ドウグラスコスタが負傷も「私には質の高い控え選手がいる」と指揮官は胸を張る。代役がきっちり仕事をした。

 「選手に優劣はない。個性が違うだけ」がチチ監督の信念だ。ネイマールという絶対的エースがいながらも、日替わりヒーローが出るのが王国らしさ。同時に「W杯は別物」と南米予選や親善試合ほどうまくいかないと覚悟していたとも。やっと歯車がかみ合って第1関門突破し、02年大会以来の戴冠へ、新たな戦いが始まる。