【カザン(ロシア)6月30日】ワールドカップ(W杯)ロシア大会1次リーグ突破時の決断が波紋を広げている日本代表の西野朗監督(63)が、選手に謝罪した。同28日の第3戦ポーランド戦、他会場コロンビアの勝利頼みで目の前の敗戦を受け入れた指示に対し、翌29日のミーティングで頭を下げた。納得した選手も一致団結、初のベスト8進出をかけて2日(日本時間3日)の決勝トーナメント1回戦ベルギー戦へ向かう。

 あの時、4万超の観衆からピッチに降り注いだブーイングを、西野監督は誰よりも重く受け止めていた。2大会ぶりの決勝トーナメント切符は舞い込んだが、選手も国民も純粋に笑顔になれなかった状況に対し、合宿地カザンに戻った29日、全員に謝ったという。

 受け止めた選手の話を総合すると、こう発言した。

 「素直に(16強を)喜ばせてあげられなくて、ごめん。勝ちに向かわない判断をして、申し訳なかった」

 30日の練習後、その真意を問われた西野監督は「本意ではない戦術を与えてしまい、それを実行してくれた選手に話をしたかったので。あの瞬間、結果を求めて(攻守)どちらかに振れなければならなかった」と説明した。一方の選手は納得しており「西野さんのおかげで夢の舞台まで来られた」(長友)「失点し、監督に究極の選択をさせてしまった僕らにこそ責任がある」(酒井宏)。消極的と批判されたが、次がある。

 結果が出たことで、試合前の勝負手も生きてくる。初8強へ「過去2回(02、10年)は、突破の時点で力を出し尽くしていた」とみていた西野監督。「ポーランド戦は最後の10分、走行距離がなかったから。その分を応援してくれる方に返したい」と言った。

 その謝罪があったミーティングは、普段参加しない裏方も含め全スタッフで行われた。主将の長谷部は「(前監督)解任から敗退の論調が強かった中、今まで到達したことがないベスト8に挑戦できることを誇りに思う」とスピーチ。一枚岩になって、新たな歴史を書き加えに行く。【木下淳】