MF乾貴士(30=ベティス)が、初のW杯で西野ジャパンを象徴するシンデレラボーイとなった。1点リードの後半7分、強烈な無回転のミドルシュートを決めた。香川からパスを受け、右足を振り抜いた。

 「打った瞬間にいい感じだなという感触があったので、入ったと思った」。セネガル戦に続き、今大会の日本トップとなる2点目。稲本と本田に並ぶ日本人3人目の1大会2ゴールを記録した。

 1度は諦めたW杯。大会前までの所属先エイバルで、シーズン中に右太ももを負傷した。「いきなり手術と言われて、その時点で1回W杯を諦めないといけなかった。でもやっぱり諦められないという、自分自身の思いをエイバルの監督やスタッフが分かってくれた」。

 スペインから緊急帰国が許され、手術を回避。「けがで足も曲がらない、膝も曲がらない自分をギリギリまで待ってくれた。感謝の気持ちを大会にぶつけたかった」。23人枠に入れない可能性が高かっただけに、西野監督への恩返しの思いを2ゴールに込めた。

 試合後、涙は止まらなかった。「(前監督の)ハリルさんなら選ばれてなかったかも」という30歳は、本田や岡崎らに慰められ、タオルで顔を覆った。「悔しい。こういう負け方は特に悔しい」と泣いた。

 「(柴崎)岳とか(原口)元気とか宇佐美とか(酒井)宏樹とかまだまだできると思う。これを経験した選手たちが次の4年後に向けて(引っ張ってほしい)」。自らの思いを後輩に託す一方で、4年後はまだ34歳。大会最軽量59キロで輝きを放った男は、向上心を忘れない。【小杉舞】