34年ぶりの東京開催の世界選手権が開幕し、日本人メダリスト1号が生まれた。今大会の日本男子最年長となる34歳の勝木隼人(自衛隊)が、2時間29分16秒で銅メダルを獲得した。五輪を含めて3度目の世界大会で自身初の表彰台。日本競歩勢のメダルは6大会連続となり、節目の通算10個目となった。「やる気・元気・勝木」の愛称で親しまれるベテランがオープニング種目を飾った。
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レース前に空を見上げた勝木は、焦っていた。「大丈夫かなぁ」。発着地点の国立競技場は、厚い雲に覆われていた。
競技開始時の午前7時半の気象条件は、気温26度、湿度77%。「本当は最高気温が35度を超えて、快晴であってほしかった。その条件で歩き切る準備はしていたけど、今回の湿度は準備していなかった」。想定外の天候に戸惑ったが、歩き始めると不安は吹き飛んでいった。
序盤から先頭につけ、26キロ過ぎまでレースをけん引。一時は表彰台圏外に順位を落としたが、そこからが「やる気・元気・勝木」の真骨頂だった。
「メダル圏外になって優勝は厳しいと思った。でも、メダルはいけるかな」
残り2キロから粘りを見せ、再びメダル圏内へ。高温多湿で次々と脱落者が出る中、力強く歩き切った。今大会の日本勢メダル第1号をつかみ「最高の形でレースを終えられた」と笑みを浮かべた。
1年前からの酷暑対策が粘りを生んだ。昨夏は気温35度以上の猛暑日の中、氷やかけ水を使わずに歩く練習を敢行。「何もせずにどれくらいのペースで押していけるのかを知りたかった」と自分を追い込んだ。
今年も7月に約2週間の高地合宿を挟んだが、その後は拠点とする陸上自衛隊の埼玉・朝霞駐屯地で日陰のないコースを歩いた。「気温35度を超えても、ペースが垂れない練習をしてきた」。この日は最後まで失速せず「涼しかった。いつもより楽だった」とほほ笑んだ。
東海大卒業後はサポート企業が見つからず、みずほPayPayドーム福岡でグッズ売りのアルバイトをしたこともあった苦労人。それでも困難に屈せず、34歳で初めて世界大会の表彰台にたどり着いた。「僕なりのリベンジができたかな」。自らの生きざまを表すようなレースを終え、笑顔で胸を張った。【藤塚大輔】

