伊藤華英のハナことば

ピラティスが私の健康を支えてくれる/伊藤華英

今回はピラティスのことを紹介したいと思う。現役引退後に初めて勉強したのがピラティスだった。

解剖学をベースとしたピラティストレーニングは、日本でも多くの方が日々のエクササイズとして行っている。私は27歳まで現役だったのだが、選手時代は腰痛があり、膝のケガもした。満身創痍(そうい)の現役生活を支えたのはピラティスのエクササイズだった。


■選手時代のケガがきっかけ


若いころの私にはアウターマッスルを鍛えることが重要だったし、筋力アップも選手としての大事な要素だと感じていた。しかしケガをきっかけに、もっと骨に近い筋肉を鍛えられないのか、と考えるようになった。

当時(2008~2012年ごろ)を振り返ると、インナーマッスルのトレーニングも今ほどポピュラーではなかった気がする。現在のアスリートたちは、さらにトレーニング内容も複雑だし、個人に合ったトレーニングを理解し実行している。現役生活が長いアスリートは特にだと思う。そこで必要となるのが、インナーマッスルのトレーニングだ。


■自分の体をコントロール


ピラティスは今の私にとっても、健康に欠かせないものになっている。

「ピラティスってなんですか?」と聞かれることも多い。ベースとなっているのは、ドイツ人のジョセフ・ヒューベルトゥス・ピラティスさんが開発したエクササイズで、第1次世界大戦の負傷兵のリハビリトレーニングだった。

簡単に「呼吸法を用いた体幹トレーニング」と答えることもある。あるいは「自分の体を自分でコントロールするスキルを学ぶもの」と私は伝えている。

例えば、骨盤底筋群への意識。背骨(体のセンター)を腹圧でコントロールしていく。骨盤底筋群という名称はよく聞くと思うが、この筋肉を収縮させることによって、骨盤が後傾している人、前傾している人もまっすぐに骨盤が立っていく。私も産後に、産科の先生、助産師さんにも「骨盤底筋群しめてくださいね」と言われたし、女性には特に重要な筋肉(インナーマッスル)だ。

それと、背骨の周りについている多裂筋(腰椎と胸椎)は背骨を安定させるためにも大事な筋肉だ。そんなインナーマッスルと呼ばれる筋肉群を、呼吸法を用いてコントロールしていくのだ。


■ポーズ1つで汗が


深層筋とも呼ばれるこれらの筋肉群を鍛えていくのは、大変なことでもある。インストラクターによって異なるとは思うが、最初は「ここのターゲットマッスルを意識して動かしてください」なんて言われても、なかなか動かせない。

現役時代は自分の体と対話する毎日だったから、そのくらい簡単と思っていたが、呼吸法を用いて集中して行うエクササイズはなかなか難しく、1つのポーズだけで汗が滴ることも多かった。


■自分の変化に気がつく


現在、オンラインでさまざまなエクササイズをしている光景をよくみる。私はとてもうれしく感じる。心と体は大いに繋がっていると思うからだ。

このピラティスは不思議なもので、今日はできても明日はできないことがある。先生のせいでもなんでもなく、自分自身の気持ちや、疲れで動きが異なるのだ。

1つの動きの中で、自分と向き合えるのだ。1つのポーズができたからといって完成ではなく、毎日の自分の変化にも気付くことができる。

ピラティスをしている時に、腰のあたりが硬くなってなかなか動かせなければ、「もうちょっと明日は大股で歩こうかな」とかちょっと工夫ができてくる。

忙しい方でも、深呼吸(大きく鼻で吸って、口で細く長く吐く)を2、3回してみるだけで、自分自身の変化に気付いていくかもしれない。

(伊藤華英=北京、ロンドン五輪競泳代表)

競泳界で「美女スイマー」として活躍し、北京、ロンドン五輪に出場した伊藤華英さんが、水泳に限らずさまざまなスポーツの魅力をアスリート目線でお伝えします。
 ◆伊藤華英(いとう・はなえ)1985年1月18日、埼玉県生まれ。01年世界選手権で初の日本代表入り。08年北京五輪で背泳ぎ2種目出場、12年ロンドン五輪で自由形リレー2種目出場。12年秋に現役引退。順大大学院博士後期課程修了。日大非常勤講師。173センチ。

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